政権交代のキーマンは野田佳彦氏/池上彰が「激動の日本」をズバリ解説(中)

池上 ところで、アメリカが台湾を見捨てると日本が台湾有事に巻き込まれなくなるということを知っていましたか。

──ええ、どういうことでしょうか?

池上 はい、では説明いたしましょう。台湾有事は台湾を助けるために沖縄などからアメリカ軍が飛び立っていくことが前提です。アメリカ本土から行くことはできませんから、沖縄や岩国基地から行くことになります。となれば、中国は普天間基地、嘉手納基地などをミサイル攻撃するでしょう。すると、日本の領土が攻撃されるわけですから、日本は黙っているわけにはいきません。自衛隊が自衛のため出動せざるをえなくなる、という形で戦争に巻き込まれるというのが台湾有事なんです。だから、もしもアメリカが台湾を見捨てることになれば‥‥。

──確かに、日本は標的にはなりませんね。これまで台湾有事だと大騒ぎしていましたが。

池上 さらにトランプは、北朝鮮のミサイルと核兵器開発を容認すると言っています。そうなれば金正恩総書記も安心するわけで、朝鮮半島の緊張が解けることになる。どうです、日本はトランプが大統領になるとますます安全、安心になるんですよ。

──複雑です。ミサイルが飛んでこなくなるのは喜ばしいのですが‥‥。

池上 そう、それでいいのかって話になりますよね。

──翻って、日本では支持率低空飛行の岸田総理が突如として総裁選への不出馬を発表しました。何があったのでしょう?

池上 内閣支持率のあまりの低下ぶりに観念せざるをえなかったのでしょう。

──岸田総理は「新総裁の下、真のドリームチームを作ってもらいたい」と身を引きましたが、ポスト岸田不在の総裁選はどうなるでしょうか?

池上 これまで岸田内閣に入っていた有力者たちが堂々と選挙運動を始めるでしょう。小泉進次郎も出馬するかが注目です。

──日本でも政権交代は起こるでしょうか?

池上 世論調査の結果では、政権交代を望むという人が6割になりました。やはり、岸田政権、あるいは自民党に対する不満が溜まっています。イギリス、フランスでは現状への不満で政局が動きました。今選挙をしたら、本当に自民党は負けるかもしれませんが、日本には「受け皿」がありません。立憲民主党ではいかにも頼りない。だから、国民民主党と糾合し、自民党に代わる政権で、かつ総理経験のある野田佳彦元首相を党首に押し立てることができればもう一度政権交代があるかもしれません。でも、今のところちょっと難しいでしょうね。

──国民としてはせめて選択肢くらい欲しいものです。

池上彰(いけがみ・あきら)1950年、長野生まれ。73年NHK入局。94年より「週刊こどもニュース」を担当。05年に退局後は、フリージャーナリストとしてテレビ出演・執筆活動を続けるほか、名城大教授など複数大学で学生を指導。

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