大阪府の吉村洋文知事は6月27日、後を絶たない特殊詐欺被害を防ぐため、ATMでの高齢者の携帯電話の使用を条例で禁止することを検討していると発表した。実現すれば全国初となる。
大阪府内では、去年の特殊詐欺の被害件数が2656件と過去最悪で、被害総額は実に約37億円に上った。被害者は65歳以上の高齢者が85%を占めており、携帯電話で指示されATMを操作してしまうパターンが多いという。
こうした被害を未然に防ぐため、高齢者のATM前で携帯電話の使用禁止、金融機関が不自然な振り込みなどを確認した際の警察への通報、コンビニなどがプリペイドカードを販売する際の利用目的の確認を義務づけることを検討するといい、罰則は設けない予定だという。
ただ、吉村知事は「非常に悪質な犯罪だと思っています。おじいちゃん、おばあちゃんが一生懸命ためた老後の資金をだまし取るわけですから。なんとかこれを防いでいきたい」と話していたものの、一方で実現性に疑問が残る。
「果たして金融機関が負担に応じるかどうか。 特に無人のATMに誘導されるケースが多いということで、こうした環境でも携帯電話を使用しているか確認できる設備が必要となる。吉村知事は金融機関などに費用を負担してほしいと話していましたが、行政と金融機関の間で調整が難航すると思われます」(夕刊紙記者)
吉村知事はコロナ禍の頃の“イソジン会見”や最近では“0歳児に選挙権”など思いつきとも取れる発言が多い。今回の件についてもSNS上では「高齢者って誰が判断するの?」「大阪万博の無駄金は?」など厳しい声も見受けられる。ただ、高齢者の詐欺被害を防ぎたいという意図はわかるだけに、今後の展開が注目される。
(鈴木十朗)