日本全体の人口が減少に転じた中でも増加傾向にある東京。一方、のんびりした生活を求めて地方に移り住む者も少なくない。ただし、地方は基本的に車社会なのが現状だ。
特に高齢者の場合、加齢に伴う動体視力の低下や視野狭窄、さらに判断力の低下などによる交通事故が大きな社会問題となっている。しかも、東京など首都圏に住んでいると車を運転する機会が少なく、マイカーを所有していない人も多い。そうした部分も地方移住への不安材料のひとつになっている。
だが、一概に「車がない=地方では不便」とも言い切れないようだ。
「山間部や農村部などの田舎は別ですが、地方都市なら車なしでも不自由しない街は意外と多い。例えば、札幌や仙台、岡山、福岡、熊本などの政令指定都市は交通インフラが発達している。そこまで街の規模が大きくなくても市内・近郊の交通の便に優れた街は少なくありません」(ライフスタイル誌編集者)
大きなポイントとなるのは、JRとバス以外の公共交通機関。具体的には地下鉄や私鉄、路面電車(ライトレール含む)、モノレールで、このいずれかがある地方都市になるという。
「関東・関西・中京の3大都市圏以外で条件に見合うのは、函館、福島、宇都宮、富山、高岡、金沢、福井、豊橋、高松、松山、高知、長崎、鹿児島、那覇の各都市。特に路面電車は段差のないノンステップ車両が多くの地域で導入され、停留所も階段がないのでシニア層の移住先にオススメです」(同)
また、これらの都市の中ではコンパクトシティとしての性質を備える街も多く、役所や病院だけでなくショッピングモールなどの商業施設にも車なしで比較的簡単に行くことができるとか。
「軽自動車でも新車は100万円以上かかりますし、年間の維持費は40万円前後。普通乗用車ならさらに出費が増えます。行動範囲は狭まりますが公共交通機関ならトータルでの出費が抑えられ、事故を起こすリスクもない。そこは大きなメリットでもあります」(同)
車に乗らない地方移住という生活も案外悪くなさそうだ。
※写真は路面電車網が充実した富山市