リークはどこが…「日朝がモンゴルで接触」韓国紙スクープ裏で蠢く思惑

「政治家を含む日本の交渉チームと、北朝鮮の諜報機関関係者が5月中旬、モンゴルの首都ウランバートル付近で接触した」

 そんなスクープ記事を韓国紙「中央日報」が大々的に報じたのは6月13日のこと。記事によれば、参加した北朝鮮代表団の中には外務省関係者の姿はなく、金正恩総書記の直接指揮下にある偵察総局関係者が含まれていたという。そのため専門家の中には「外務省ではなく、対南・海外工作を担当する偵察総局の人間を出席させることで、最初から会談では拉致被害者問題を議題にしない、という意思表示をしたのではないか」との見方もある。しかし、あえてこの時期に第三国で両国代表団が会談したことには当然、様々な憶測が流れている。

「報道を受け、林芳正官房長官は『報道があることは承知しているが、事案の性質を踏まえコメントは差し控える』と慎重な言い回しに終始しましたが、否定しない以上、実際に会談があった可能性が高い。今回スクープした『中央日報』しかり、昨年7月には中国やシンガポールなどで日朝実務者が複数回にわたり水面下接触を行った、とする記事を打ったのも韓国紙『東亜日報』。その際は『複数の消息筋』の話として日本が事前に米国側に北朝鮮と交渉することを伝え臨んだものの、関係改善の糸口は見つからなかったと報じている。しかし松野博一官房長官(当時)は事実関係そのものを否定したが、9月には朝日新聞が『日朝水面下交渉』と報じ、皮肉にも『東亜日報』の記事を裏付ける形になってしまった。つまり、一度ならず二度までも、国を揺るがすような重要機密が相次いで、韓国紙に漏洩してしまったというわけです」(国際部記者)

 いったい誰が、どんな意図を持って韓国紙にネタをリークしているのかはわからないが、常識的に考えて、徹底した秘密主義国家である北朝鮮側から情報が漏れる可能性は極めて低いと考えられる。となれば、漏洩元は日本ということになるのだが…。

「林官房長官は『これまでも、さまざまなルートを通じて“働きかけ”を行っている』という言い方をしており、日本側は複数のチャンネルを通して糸口を見つけるべく水面下で動いてきたとされ、その中には朝鮮総連系のルートも含まれていたはず。永田町では、その辺りから流れたという噂もあるようです」(同)

 一方、永田町の中には韓国政府と太いパイプを持つ政治家も多く、尹錫悦政権発足以降の日韓関係好転により、以前にもまして脱北者の情報提供などを含めた拉致被害者情報などをやり取りする機会が増えた。そんな流れの中で日本側から情報が提供され、それが韓国メディアに流れた、との見方もあるようだ。

「日米間が協力関係にある中でも、拉致被害者問題を最重要課題に掲げる日本政府としては、むろんすべてにおいて米韓に“右へならえ”はできない。そのことを熟知しているからこそ、北朝鮮としては拉致問題を切り札に、なんとか日本政府を上手く操り、経済援助を引き出しながら関係性を優位に持っていこうとしていることは言うまでもありません。一方、韓国は韓国で、ようやく関係が好転しはじめた今、完全に敵国となった北朝鮮と日本との関係が間違っても修復されるようなことになっては困るわけです。そのため、今回の報道も韓国政府による日本政府に対する無言のプレッシャーだとする専門家もいますからね。いずれにせよ、情報漏洩が拉致問題解決をさらに遅らせる要因になることは間違いない。今回の件に関しても、政府には一日も早い事実関係の究明が望まれます」(同)

 高齢化する拉致被害者遺族のためにも、一日も早い解決を祈るばかりだ。

(灯倫太郎)

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