熊本5社が「交通系ICカード」利用廃止へ 地方のバス・市電でも「離脱」加速か

 今ではすっかり身近になった交通系ICカード。近年はiPhoneなどのスマホにも実装できるようになったため、電車やバスなど交通機関だけでなく、物品の購入などにも使用されている。

 そんな便利な全国交通系ICカードが熊本県内の路線バスで年内にも使えなくなることが5月27日、明らかになった。翌28日には路面電車の熊本市電も2025年度までで交通系ICカードによる運賃決済を取りやめると発表。地元住民からは戸惑いの声が上がっている。

 全国交通系ICカードは「Suica」や「PASMO」「ICOCA」「SUGOCA」など多岐にわたる。最近はスマートウォッチやスマホにアプリを入れて使う人も多いが、なぜここにきて廃止の方向に向かっているのだろうか。

 経済誌ライターが語る。

「決済システムの保守契約が25年3月末で切れるため、熊本市に本社を置く九州産交バス、産交バス、熊本バス、熊本電気鉄道、熊本都市バスのバス会社5社は、搭載される機器の入れ替えに全体で約12億円かかると見込んでいました。ところが近年普及が進んでいるクレジットカードのタッチ決済や、PayPayなどのQRコード決済の場合、読み取り機器が安価なため、約半分の6億円に抑えられる。タッチ決済は近年、急拡大しており、インバウンドにはICカードの購入が不要となるなど利点もあるわけです。ただ、これまでの利用者にとっては不便になるでしょうね」

 全国交通系ICカードの導入には高いコストがかかるため、経営環境が厳しい地方交通機関では今後もシステム更新のタイミングで離脱したり、タッチ決済に変更する動きが出てくる可能性は高い。

 JR東日本は「えきねっと」会員限定ながら、QRコード改札を2024年下期より一部エリアで開始していくことを表明している。当面、都市部では異なるニーズを取り組むために併存されるだろうが、地方では全国交通系ICカード離れが加速するかもしれない。

(ケン高田)

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