これも日本の芸能界の闇の一部なのか、「第2のジャニーズ問題」に発展しそうだ。
入団7年目の宙組劇団員(25)が9月末に亡くなっていた問題で宝塚歌劇団は14日、記者会見を開いた。木場健之理事長は外部弁護士による調査チームの調査報告として、「長時間の活動に上級生からの指導が重なり、故人に強い心理的負荷がかかっていたことは否定できない」としながらも、「いじめやハラスメントは確認できなかった」と発表した。
調査報告書は、女性が上級生からヘアアイロンを当てられ額にヤケドを負った件に「故意とは確認できなかった」と判断、上級生から「嘘つき野郎」とののしられた件についても、嘘をついてないか繰り返し聞かれていたことは認めたが、暴言自体は「伝聞であり認定できない」とした。
これを受け、遺族の代理人弁護士・川人博氏は猛烈に批判。報告書について「失当、つまり間違いであり、劇団と上級生の責任を否定する方向に誘導している」「被災者が嘘をついたかのように認定している」「あまりにも遺族に対して失礼ではないか」と断罪。検証のやり直しを要求し、ハラスメントを認めない歌劇団に対し「きっと同じことが繰り返される」と警告した。
「川人博弁護士は15年に電通の女性新入社員が過労自殺した事件を担当し、『過労死問題の第一人者』と呼ばれる弁護士。11月10日に行った会見では、上級生からパワハラがあったこと、亡くなる直前は1日の睡眠時間が3時間しかとれない一方、稽古に15時間も費やされていて『常軌を逸した長時間労働』があったことなど、概ね週刊文春の報道と一致する内容を明らかにし、歌劇団側に謝罪と補償を求めていました」(社会部記者)
そもそも歌劇団側は文春報道に対し、10月1日時点では「ご親族の心情に配慮し、詳細につきましては公表を差し控えさせていただきます」と木で鼻をくくったようなコメントを出し、5日には「このような時期に個人の尊厳やプライバシーを侵害するような内容が記載されておりますこと、甚だ遺憾に存じます」と記事に対し不服を述べていた。情報開示に消極的な姿勢、コメントににじみ出る事なかれ主義でイメージが悪化していた。
「故ジャニー喜多川氏の性加害問題では、日本商工会議所の小林健会頭が『公然の秘密だったと思う』『芸能界で他にも同じ事例はないか』といった発言をして、日本の芸能界が極めて古い体質にあり、現代社会のコンプライアンスにそぐわないことを指摘しました。今回の宝塚の問題も伝統やしきたりという名の組織の暗部に切り込むもので、川人弁護士が登場するに至ったのも、歌劇団側の黙認主義や事後対応に遺族の不信感が極度に募ったためと考えるのが自然です。ジャニーズに続き、宝塚にもコンプライアンスのメスが入るかもしれません」(同)
週刊誌報道に端を発し、かつ極めて古い体質を垣間見せたのは、市川猿之助事件のあった歌舞伎界も同じだ。そして、被害者が泣き寝入りを強いられてきたこの手の問題は、一度火がつけば「Me Too」運動のように大きなうねりになる。思い至るフシのある芸能関係者たちは、「明日は我が身」と戦々恐々としてこの問題を見ているかもしれない。
(猫間滋)