「誰も手出しできないよう、国家の基本法として永久化されたのは歴史的な出来事だ」
北朝鮮で26、27両日に渡って開かれた最高人民会議の演説で、北朝鮮の核戦力について強い口調で自信満々に、こう宣言した金正恩総書記。
北朝鮮は昨年9月の同会議で、核兵器の使用条件などを定めた法令を採択。今回の会議で核兵器関連の法体系を整備し「責任ある核保有国として戦争を抑止し、地域と世界の平和と安定を守るため核戦力を高度化する」という内容が憲法に盛り込まれることになった。
「むろん、その狙いは北朝鮮が『最大の脅威』だとする日米韓の連携強化であることは言うまでもありませんが、金総書記は演説で核兵器の増産や多様化が重要課題だとして、実戦配備を進めるよう求めた。プーチン氏との首脳会談後に国の指針として『核兵器高度化』を謳ったとあって、ワシントンにも大きな衝撃が走ったようです」(国際部記者)
というのも、米国はこれまで北朝鮮という国を、中国の傀儡であり対等に相手するには値しない相手と高をくくっていた感がある。しかし、今や情勢は一変。それが、米国の反応に表れているというのだ。
「正恩氏がロシアへ訪問するという記事を最初に抜いたのは、米ニューヨーク・タイムズでした。おそらく政府筋から入手した情報で、そう考えると北朝鮮内の動向に関して、いかに米国が情報収集を行っているかが窺い知れる。プーチン氏にしても、4年前に金総書記がロシアを訪れた時と今回とでは、対応の差は歴然でしたからね。つまり今や北朝鮮は、一定の緊張感で保たれていた米露中の三角関係を大きく揺るがす存在へと変貌を遂げているのです」(同)
露朝首脳会談では、軍事同盟復活とまでは行かぬものの、ロシアによる北朝鮮への経済協力及び、両国の戦略関係再開を示唆する発言も見受けられた。
「仮に、ロシアが北朝鮮に対し全面的に経済協力した場合、これまで西側が北朝鮮に対し行ってきた制裁は完全に無力化されることになります。なぜなら、ロシアは国連の手前、北朝鮮への表だった経済支援は踏み留まっていた。そのため北朝鮮の貿易相手は9割以上が中国1国だけだったわけです。しかし、自国も西側から制裁を受ける身になったロシアとしては、もはや北朝鮮と経済協力しない理由がなくなってしまった。ロシアには石油も食糧もふんだんにありますからね。ロシアが北朝鮮との貿易を全面的に解禁した場合、グリップがきかなくなる中国にとっても痛手になりますし、アメリカとしても制裁する手立てがなくなり、両国ともに大きなデメリットとなってしまうのです」(同)
そんなこともあってか中国は、金総書記のロシア訪問中に急遽プーチン氏の訪中と中露首脳会談を発表。それを受け米国もサリバン大統領補佐官が中国の王毅外交部長とマルタで会談、バイデン‐習近平首脳会談を調整したとされている。つまり、そんな中で北朝鮮は憲法明記を宣言したわけで、人民会議で「核戦力を質、量ともに急速に強化する」と高らかに演説した金総書記の言動に世界がますます注目している。
(灯倫太郎)