「慶應三田会」強大パワー(1)甲子園優勝で異様なボルテージ

 過ぎたるは猶及ばざるが如し。今年の夏の甲子園は神奈川代表の慶應義塾が宮城代表の仙台育英を8─2で破り、107年ぶり優勝の歓喜に沸いた。が、あまりに盛り上がりすぎた応援が「ヤバすぎ」と、今なお波紋を呼んでいる。背後で隠然たるパワーを示した組織「慶應三田会」の秘密に迫る。

 甲子園決勝戦、3塁側アルプススタンドを超満員に埋め尽くしたOBなど大応援団が、肩を組んで応援歌「若き血」を熱唱すると、甲子園全体が異様なボルテージに包まれた。

 試合後、「いくら何でもやりすぎだ」と〝はしゃぎすぎ〟応援団に世論の批判が集中すると、慶應高校野球部OBのTBS井上貴博アナ(39)は、8月26日のみずからがパーソナリティーを務めるラジオ番組で、「慶應びいきの報道はおっしゃる通り、私も見ていて気持ち悪かった」と認めたうえで、「選手に批判が向けられるのは違うと思う」と涙ぐむ〝放送事故〟寸前の珍事まで繰り広げたのだ。

 そこで脚光を浴びたのが、強烈な結束力を誇る慶應OB軍団「三田会」の存在である。もちろん「三田」は慶應大学の本拠地である東京・港区の地名に由来するが、その実態は東大「赤門会」や早稲田「稲門会」も歯が立たない、日本最強の学閥組織なのだという。

 そもそも「三田会」は慶應大学の同窓会組織であり、総本山として「慶應連合三田会」があり、その下に約880の個別の三田会を配し、約36万人の慶應OBが属している。その中身は4種類に大別され、まずは毎年の卒業生からなる「年度三田会」。さらには、勤務先の企業ごとの「勤務先三田会」、自治体などの地域ごとの「地域三田会」。そして、サークルやゼミ、学部・研究科単位のOBで構成される「諸会」があるという。

「同窓会であって同窓会でない」

 その特殊性を語るのは「慶應三田会の人脈と実力」の著書を持つジャーナリストの田中幾太郎氏だ。

 中でも数が多い「勤務先三田会」が、特定の分野で、まるで〝秘密結社〟のごとく勢力を誇示しているという。

「特にたくさんのOBが進出しているのが、商社、不動産、金融分野です。5大商社の4社、財閥系不動産の3社で、慶應のOB比率が一番高く、『三田会』の中核を形成しています。最近はアクセンチュアなどのような大手コンサル会社や、楽天などのIT系企業にも多くのOBが進出して勢力を伸ばしています」(田中氏)

 こうした財閥系など勝ち組企業以外にも、公認会計士や弁護士など難関分野に多くの人材を輩出し、三田会パワーを浸透させているというのだ。

*「週刊アサヒ芸能」9月14日号掲載

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