900店舗に急拡大「chocoZAP」に「いきなりステーキ」の二の舞を心配する声

 あの「結果にコミットする」RIZAPが昨年7月から始めた新形態の格安ジム「chocoZAP(チョコザップ)」が1年で会員数を80万人に伸ばし話題になっている。

 24時間使い放題で月額3278円(税込)という安さで、コンセプトに「簡単」「便利」「楽しい」とあるように、「着替えもないから5秒でスタート」を謳い、着替え・履き替え不要で1日5分からの利用を呼び掛けている。

「破格の安さは、スタッフのいない無人ジムで、服を着たまま短時間の利用を想定しているので、シャワーも無し、フリーウエイトも無し、マシンの種類も限定的という、徹底的なコストカットを行っているからです。この形態を生み出したマーケット戦略がまたユニークで、会社資料が示すターゲットはシニア3600万人と女性3600万人を含んだ『運動初心者1億人』で、筋トレ上級者は対象外とあるので『ジムは運動好きな人が通うところ』という概念とは全く異なったアプローチをしています。一方で、女性を広く狙っているからでしょう、セルフエステとセルフ脱毛マシンがタダで使えるというのも特徴です」(経済ジャーナリスト)

 24時間使い放題だとエニタイムフィットネス、短時間で女性の利用ということなら女性限定で30分フィットネスがウリのカーブス辺りが競合するところだが、エニタイムはおよそ7000〜1万円、カーブスは6820〜7920円が月にかかるので、chocoZAPは「ジムのコンビニ」とでも言ったところか。会員数でも、エニタイムの78万人、カーブスの77万人を現時点では追い抜いたことになる。昨年7月にスタートしたばかりなのを考えると、まさに日の出の勢いで業界を席巻しつつあるようだ。

 だが一方、急激な出店拡大を心配し、やはり急速に店舗展開を広げ過ぎたが故に失敗した、いきなりステーキを引き合いに出した声が上がってもいる。

「chocoZAPはフランチャイズ展開はせずに、全て直営。出店先も競合と会員獲得で上回るように、坪単価が高めの物件に出しているようで、莫大な販促費もかさんで、利益につながるのはしばらく先になりそうです。実際、8月14日にあったRIZAPグループの4〜6月の四半期決算では、グループ全体の売上は387億2500万円で前年同期比2.6%増の一方、営業損失は前年同期が約2億8600万円だったのに対し、28億6800万円と大きく膨らんでいます」(同)

 それでもいきなりステーキとの大きな差として、chocoZAPはサブスクとして安定収入があるとの指摘もあるが、最大の問題は、既存のジムで分岐点とされる半年後の定着率がどうなるかという点だろう。盲点を突いた試みだけに、意外に早く飽きられる可能性もなくはない。

 始まってまだ1年ほどなだけに、今後がどうなるかが注目されるところだ。

(猫間滋)

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