かねてから懸念されてきた今年6月からの電気料金の一斉値上げ。北海道、東北、東京、北陸、中国、四国、沖縄の大手電力7社は28%から45%までの「規制料金」の値上げを経済産業相に申請。経産省の審議会では、燃料費の見積もりなどを審査して、値下げ幅を計算し直すように求めていた。
「いくら燃料価格が高騰しているとはいえ、家庭向けの電気料金(規制料金)は電力会社が勝手に上げるわけにはいきません。東京電力は当初29.3%、およそ3割の値上げを申請していましたが、燃料費の下落傾向などを踏まえて再計算し、値上げ幅17.6%の算定額で経産相に提出しました」(経済部記者)
それでも電気料金が上がることに変わりはない。この夏に向けて、一般家庭ではよりいっそうの節電が求められそうだ。
そんな中、「いくら節電と言われても限界があります」と肩を落とすのは、都内で「マグロ料理専門店」を営む経営者A氏。マグロの赤身、中トロ、大トロといったメニューに加え、マグロの脳天、ホホ肉といった希少部位も取り扱っているが、近年の電気料金の上昇が死活問題となっている。
「うちは小さなお店なので、一般家庭と同じ料金システム。本格的な値上げはまだ先の話ですが、ウクライナ侵攻が始まって以降、燃料費調整額という名目でかなり上乗せされていますよね? 実質的な値上げで大打撃を受けました。じつはマグロを扱うにはかなり電気代がかかるんです。2年ほど前は5万円だった電気料金が、今は7万円、8万円が当たり前。そこから3割増しになったらやっていけません」
こう話すA氏に、マグロの秘密を明かしてもらうと…。
「マグロを扱うには専用の冷凍庫が必須。これがかなり電気を消費するんです。マイナス60度で保存しないと、変色したり、味が落ちてしまいますからね。その日に仕入れた冷凍マグロをすぐに使い切る分には問題ありませんが、うちのように質の良いマグロをキロ単位で仕入れる店はそういうわけにもいきませんからね。また、希少部位をいつでもお手頃価格で味わっていただくには、マイナス60度の専用冷凍庫がどうしても欠かせないのです」
円安による輸入量の激減、漁獲高の減少でクロマグロの価格は上昇傾向にある。電気料金の値上げで保存コストも上昇すれば、今ほど気軽に食べられなくなるかもしれない。
(コレッシュ山本)