昨季は両リーグともに連覇となったが、今季は地殻変動が起こるのか? 球界の賢人4人に無理を承知で、キャンプ前から日本一早いペナント予想を依頼した。西武、オリックスで指揮を執った「稀代の名参謀」こと伊原春樹氏の答えとは--。
セ・リーグの優勝候補はヤクルト、そこに阪神が挑む形になると思います。ヤクルトは主砲の村上宗隆(22)をはじめ昨季の優勝メンバーがほとんど残る。唯一、守護神のマクガフが退団しましたが、清水昇(26)か木澤尚文(24)でカバーできると思います。ストッパー出身の高津臣吾監督(54)ですから、うまくやるでしょう。
打線では山田哲人(30)の復調に期待したい。ここ3、4年は、彼ほどの選手にしては物足りない成績に終わっています。WBC出場が内定したようだし、これがいいきっかけになればいいんだけどね。
一方の阪神は、投手陣は万全ながら野手はどうなるかな。岡田彰布新監督(65)は佐藤輝明(23)をサードに、大山悠輔(28)をファーストに固定することを明言。この2人を主軸としてどう打線を組むかに注目したい。課題は二遊間をどうするか。秋季キャンプでは中野拓夢(26)にセカンドを守らせていたけど、じゃあショートは誰にやらせるんだ、ということですから。
第2集団は昨季2位のDeNAと広島でしょう。私は先発のコマが揃っている広島が上位と見ますが、打力に勝るDeNAも捨てがたい。ただしDeNAは、足を絡めた攻撃がほとんどないのがネックだと思います。牧秀悟(24)や宮﨑敏郎(34)、オースティン(31)が出塁しても、塁上では「重石(おもし)」でしかないからね。
機動力のある走者を置けば、相手投手の負担が大幅に増す。これは実際の盗塁数とは関係なく、143試合やれば数字以上にジワジワ効いてきます。攻撃のバランスで、やはり阪神、ヤクルトに軍配が上がる。
同じことは巨人にも言える。レギュラー格で走れるのは吉川尚輝(27)くらい。走者は次の打者が打つのを待っているだけですよ。なぜ原辰徳監督(64)は改善しようとしないのか。それに菅野智之(33)、戸郷翔征(22)に続く先発ローテがいないのに、昨季20登板のメルセデス(28)をロッテに放出したりもした。もう私には原監督が何を考えているのか読めませんよ(苦笑)。今年はAクラスも厳しいかもしれません。
パは昨季同様にオリックスとソフトバンクが中心になるでしょう。ソフトはエースの千賀滉大(29)が抜けましたが、東浜巨(32)や和田毅(41)、石川柊太(31)に加えて大関友久(25)、坂東湧梧(27)、先発転向組の藤井皓哉(26)や森唯斗(31)もいる。不安はないでしょう。打線は近藤健介(29)の加入でさらに厚みを増しました。
オリックスも吉田正尚(29)がメジャー移籍しましたが、正捕手としてFAで森友哉(27)が加入。吉田に打率こそ負けますが、森の長打力と伸びてきているリード面は確実にチームの力となる。本人も投手との連携を深めるため侍ジャパンを辞退するなど、気合いが入っています。
注目は松井稼頭央新監督(47)を迎えた西武ですね。私がコーチ時代、彼は選手だった。本人も、当時の西武の足を絡めた戦術を目指すのではないかと思うんです。外崎修汰(30)や源田壮亮(29)、さらに昨季は大ケガ明けで本領を発揮できなかった若林楽人(24)ら、そのための選手は揃っているのに、昨季の盗塁数はリーグ最下位でしたからね。いつまでも山川穂高(31)に頼り切りになるわけにもいかないし、幸い、投手陣もよくなってきた。先発投手陣が揃っているロッテとAクラス入りを争うでしょう。