戦争の長期化により、深刻な兵士不足に陥っていると伝えられるロシア軍。プーチン大統領は先月、ウクライナ侵攻から7カ月目に入る中、ロシア軍の規模を190万人から204万人に拡大する法令に署名した。
「現在、前線にいるロシア軍兵士の数は15万〜20万人といわれますが、米国の統計によれば、そのうちすでに7万5000人が負傷、あるいは戦死しているとされています。軍は兵士不足を補うため、地方などを中心に再三再四募集をかけているのですが、なかなか思うように集まらないというのが現状のようです」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)
そんな中、ロシア国防省は負傷して帰還した兵士に戦闘復帰を求めたり、あるいは民間警備会社を通じて人員を調達したり、さらには恩赦や金銭的補償と引き換えに、有罪判決を受けた犯罪者の兵士採用を画策しているという驚くべき情報が、複数の欧米メディアにより伝えられている。
報道によれば、兵力の補充に苦慮しているプーチン大統領も支持率低下の恐れがあるため、おおっぴらには総動員による正規軍補充が出来ない。代わりに、プーチン氏に近い実業家が資金提供する民間軍事会社「ワグナー・グループ」が、各地の刑務所などで戦闘員を募集し始めているというのだ。
「実は、ロシアでは民間軍事会社は違法で、本来は『存在しない』という建前になっているのですが、プーチンも背に腹は代えられないという思いがあるのしょう。今や、地方都市のあちらこちらに《オーケストラ「W」は君の入隊を待っている》といった広告が張り出され、ロシア国内では、ワグナーの存在が公然化しつつあるようです」(同)
今年7月には、ロシアの独立系報道機関「iStories」が、「ワグナー・グループ」による受刑者勧誘活動について報じている。
「報道によれば、ワグナーは今回のウクライナ戦以前から受刑者らを兵士に勧誘していたといいますが、以前は軍事経験のある受刑者のみの応募に限っていたところが、現在の募集は服役20年未満の受刑者が対象となっていることを考えても、現状がいかに逼迫しているかを物語っています。彼らが提示している条件は、6カ月間の任務を終えて無事生還すれば保釈され、月額20万ルーブル(46万円)が与えられるというもの。さらに、万が一死亡した場合は遺族に500万ルーブル(約1160万円)の補償金が出るそうです。ただし、同メディアの取材に答えた受刑者の親族は、これらはすべて“口約束”のみで書面に記載されていなかったと話していますから、約束が実行されるかどうかはわかりません」(同)
とはいえ、ある刑務所ではすでに200人が応募、40人が選ばれたという情報もあり、その数は今後も増加する可能性が大きいとも伝えられる。
また、7日に行われた日米韓の高官による会談では、ロシアが北朝鮮との間で弾薬の調達について協議していることが取り上げられた。
兵士だけでなく、武器弾薬も大量消費されるなか、北朝鮮に「人」「武器」両面で提供を求めているというロシアだが、一方のウクライナも、欧州からの武器提供が難しくなり、さらに米国への依存度が高まることは必至だ。
ウクライナ東部と南部で徹底抗戦の構えを見せるロシアとウクライナ。攻防戦はまだまだ続きそうだ。
(灯倫太郎)