HPで「まぢピンチ」と訴え! 京都市交通局「お客様激減」の苦境

 2.5頭身キャラの女性教師が黒板を指し示しながら「まぢピンチ」と言うと、机を並べたやはり2.5頭身の女子生徒3人が「それな」と頭の中でつぶやく。黒板には「市バス・地下鉄ご利用状況」の折れ線グラフが描かれていて、最新の数字は急転直下の「25%↓」となっている。その横には「お客様激減」と記載が。

 京都市交通局のHPを開くといきなり視界に飛び込んで来るのが、こんなキャラのイラストだ。その上部には、「持続可能な市バス・地下鉄に向けて 経営状況等の『見える化』に取り組んでいます」とある。ならばとばかりに、矢印に従って経営状況が見える化されたページに飛べば、コロナ前の19年度に比べて21年度は、市バスの利用が25.1%減り、地下鉄は26.2%減少したという。結果、20〜21年度で消えた運賃収入は約270億円にも上るというから、確かに事態は深刻だ。

 つまり、京都市交通局がHPにキャラを登場させたのも、この深刻さをビジュアルで見える化して理解してもらうため。確かにお堅いお役所に「まぢピンチ」とまでぶっちゃけられれば、「それな」と返したくもなる。

 もともと京都市では、観光都市としての華やかなイメージとは裏腹に、慢性的な財政難で知られていた。市の行財政審議会がまとめたところによれば、地下鉄東西線を始めとする、バブル期の公共工事がその理由だという。当時の過大な投資が市債という借金の形で残り、今でも大きくのしかかっているのだとか。

「市は昨年5月には、このままでは28年度にも『財政再生団体』に転落するとの見解を示しました。つまり北海道の夕張のようになって財政が破綻する。会社で言えば、倒産するということです」(全国紙記者)

 6月15日からHPトップに登場したこのキャラは、もともとは市バスと地下鉄の利用促進PRで活躍していたキャラたちだ。ただPRでは等身大だった彼女らも、今回の「見える化」では2.5頭身の「ちびキャラ」に変身。これなら事の悲惨さを回避しつつも、深刻さは伝わる。そこで「思い切った英断!」と言いたいところだが、実は身から出たサビの部分もあるようで。

「昨年秋には工期4年、159億円もの予算をかけた京都市役所の改修工事が終了しましたが、耐震、バリアフリーは必要なものとして、それ以外にもエントランスや議会場にはステンドグラス、復元した『正庁』の間の壁面に「緞子(高級織物の代名詞の1つ)張り」を施したり、来賓のための茶室を設えるなど、贅を尽くしたものとなっています。そんなものは京都ですから寺社仏閣に行けば見られるものなのに」(同)

 と、放漫体質は昔と変わっていないという。次はムダ使いの「見える化」もしてみたらいいのではないだろうか。

(猫間滋)

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