岸田政権が7日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」いわゆる「骨太の方針」の評価が芳しくない。“骨太”ならぬ“骨抜き”、果ては“骨粗しょう症”との揶揄まで聞こえている。
まずは「防衛費を対GDP比2%」枠と、その出費増に伴って当然問題となってくる、基礎的財政支出(プライバリー・バランス、PB)黒字化をめぐっての問題だ。
「報道されている通り、このところ『日銀は国の子会社』発言に見られるように、安倍元首相があらゆるところで口を差し挟む場面が目立っています。バイデン米大統領が訪日した際、岸田首相が防衛費の“相当な増額”を約束したことを取り上げて、『GDP2%』の文言を入れるよう最後までこだわりました。PBでも財政再建派と積極財政派の内部対立が伝えられ、結局防衛費は『5年以内の抜本的強化』、PBは『25年度の黒字化目標の堅持』で落ち着きましたが、最後まで水面下の調整がもつれる異例の取りまとめとなりました。特に“経産相内閣”とまで言われて防衛費強化で積極財政派の安倍元首相と、財務省寄りで財政再建派の岸田首相との間で、アベノミクスの修正か継続かを巡っての暗闘ばかりが目立った結果となっています」(全国紙記者)
まさに骨抜きと言われる所以だが、全体を見渡しても新味はない。
「重要投資分野として5つの項目を掲げていますが、『人への投資と分配』では賃上げと税制を行うとしているものの、今まで通りで具体的な方策に乏しいですし、『科学技術・イノベーションへの投資』はアベノミクスの3本目の矢と同じことを言っているのと変わりません。『スタートアップへの投資』も同じで、海外投資を呼び込むとしていますが、国内の企業が投資せずに内部留保を貯め込んでいる状態で、どうして外国人が投資するというのでしょうか。全体的に総花的で新味と具体性に乏しい。日本はもはや先進国ではないのだから、思い切った『選択と集中』をすべきなのにそんな姿勢がうかがえません」(経済ジャーナリスト)
そもそも骨太の方針は、01年に「構造改革」を掲げた小泉政権が、大蔵省から予算編成権を政治が取り上げるために内閣府で経済財政諮問会議を立ち上げたのがスタート。当時急がれていた不良債権処理と、小泉首相の宿願だった郵政民営化を実現するため、竹中平蔵担当大臣を執行役として、小泉人気を背景にした実行力を駆使して強力に機能した。
だがその後、慣例化した感は否めないし、強力な内閣でないと効力も発揮しづらい。ましてや安倍元首相の大人げない暗躍で今回のような体たらくになるのであれば、「骨太」の名が泣くばかりだろう。
(猫間滋)