近畿日本鉄道(近鉄)は来年4月から値上げをする予定を公表したが、名古屋まで行くのに「新幹線よりも高くなる!」と、ユーザーを中心に悲報が広がっている。
「近鉄は4月15日に国交大臣に料金改定の申請を行ったことを公表しました。同社では2019年に197億円あった経常収支の黒字が2020年にはマイナス232億円とコロナによる大打撃を受けた一方、導入から60年も経っている車両の入れ替えなどで23〜25年度に約860億円に上る設備投資を行う予定です。このギャップはあまりに大きく、となればもう運賃アップをするしかないというわけです。同社が運賃を値上げするのは1995年の9月以来のことです」(経済ジャーナリスト)
具体的な中身は、平均で17%の値上げだ。定期は通勤で18.3%、通学で9.2%。3キロまでの初乗り料金は現行の160円から180円になる。
ここで問題なのは、3、6、10キロまでの近距離の値上げ率はそれぞれ13、14、15%で平均改訂率より低いが、11キロ以上の遠距離だと18〜20%で上昇率が高いことだ。だから、名古屋までの特急料金が新幹線より高くなってしまうのだ。
「近鉄の大阪難波—近鉄名古屋間は『近鉄ひのとり』で4990円(現行4540円)、『アーバンライナー』で4790円(同4340円)になるのに対し、新幹線の新大阪—名古屋間だと、もちろんのぞみやひかりは6000円以上してより高額ですが、格安旅行商品の『ぷらっとこだま』なら4600円なのでこれを超えてしまうことになります。しかもぷらっとこだまは1ドリンク引換券も付いてくる上、所要時間はひのとりの130分、アーバンライナーの140分に対してわずか70分なので、近鉄が完敗なのです」(同)
加えて、阪急、京阪、南海、JR西日本のライバル社との比較でも大きく差がつくことになる。改訂で全ての距離で近鉄が一番高くなり、かろうじて90〜100キロまでの距離のみでJR西より安くなるだけだ。特にもともと料金差が大きかった阪急、京阪との差がさらに広がり、阪急で一番遠い70キロまでだと阪急530円に対して近鉄は1210円(現行1020円)で2倍以上、京阪で一番遠い50キロまでだと京阪420円に対して近鉄は910円(現行770円)とこちらも2倍以上になる。
先日、JR東日本が東京・山手線でホームドアの設置やバリアフリーのための段差の解消などで10円の値上げを打ち出した際、「納得がいかない」との声が上がった。ところが近鉄になると2割近い値上げだというのだからケタ違い。近鉄の置かれた苦境が伺える。
(猫間滋)