アメリカン・エキスプレスやマスターカードと並び、世界的シェアを誇るクレジットカードの国際ブランド、Visaカード。そのVisaカードに対し、米アマゾン・ドット・コムが「イギリスで発行されたVISAのクレジットカードでの支払いを2022年1月19日以降、停止する」と突然告知し、波紋を広げたのは昨年11月のことだった。
「停止理由についてアマゾンの広報は、Visaカードの手数料の高さが問題として『お客様にベストプライスを提供しようと取り組んでいる企業にとって、カード決済のコストが障壁になっている』とコメント。ただ専門家の間では、手数料の値下げを引き出そうとする駆け引きで、どこかの時点で着地するだろうとみられていました」(経済ジャーナリスト)
ところが、12月に入っても双方に歩み寄りの姿勢がなかったのか、使用停止の期日がすぐそこに迫ってきた。
アマゾンは既にシンガポールとオーストラリアでVisaカードでの決済に0.5%の手数料の上乗せ分を課すことを始めており、一部報道によると豪州の消費者にはVisaのカードを使用しないよう呼び掛けている、とも伝えられるが、
「今回、英国で取り扱い停止の対象となるのは、英国内で発行されたVisaのクレジットカードのみで、Visaのデビットカードは引き続き利用できます。とはいえ、Visaのクレジットカードしか持っていない人は、マスターカードなど他社クレカを新たに作るか、他の決済方法をとらなければならず、そうなればVisaのクレジットカード離れが加速することも考えられますからね。Visaにとっては打撃でしょう」(同)
日本でも2020年度の国際ブランドの利用割合はVisaが50.8%と1位だ。アマゾンをVisaカードで利用している消費者は多く、仮に日本で同様の事態が起これば、両者が大打撃を受けるだけなく、消費者が大混乱することは必至だ。
「今回の利用停止は、イギリスがEU離脱したことによって手数料の改定がしやすくなったという背景もあり、それが直接日本に影響する可能性は低いでしょう。とはいえ、『クレジットカード受け入れコストは時間の経過とともに下がるべき。その分を商品の値下げや顧客サービスに再投資できる』というアマゾンの主張はどの国でも変わらず、今後、特定のクレジットカードの利用に小幅課金されたり、クレカ自体の利用が制限される可能性はないとはいえない。つまり対岸の火事ではないということです」(同)
結局、しわ寄せはカードを利用している消費者に降りかかって来るということか。
(灯倫太郎)