恋愛リアリティー番組「テラスハウス」(フジテレビ系)に出演していた木村花さんが亡くなったことで一気に議論が広がったSNSでの誹謗中傷問題。もちろん中傷された側にとって深刻な問題なのは言うをまたないが、する側も失うものは多く、しかもやってしまったことはとり消せない。
警視庁捜査一課は12月17日、ツイッターで木村さんを中傷する内容の投稿をしたとして、大阪在住の20代男性を書類送検した。
「この男性は『顔面偏差値低いし、性格悪いし、生きている価値あるのかね』、『ねえねえ、いつ死ぬの』などと書き込んでいたといいますが、警視庁は残っている発言だけでなく、一定期間のページを復元できるソフトを使って約600アカウント、1200件の投稿内容も確認しています。ということはつまり、現在は消えているアカウントやリプライも罪に問われるということです」(社会部記者)
考えてみれば当たり前の話で、侮辱罪や名誉棄損罪は侮辱や名誉棄損があったことを問うもので、今現在発言が残っているかどうかは関係ない。だから、「既に消したけど」という言い訳は通用しないのだ。
法務省が18年に公表したネット上で発生した人権侵犯事件の件数は2217件で10年前の4倍に増加。捜査当局もこの傾向は重く受け止めていて、今後は悪質なものについて摘発は増える可能性が高い。事実、17年には滋賀県の18歳の男子高校生を中傷する書き込みをしたとして、都内の19歳の少年が逮捕されている。この高校生も「なりすまし投稿」の被害に悩んで自死してしまった。
刑事事件だけでなく、今後は民事事件で訴えられるリスクが高くなる。
「木村さんの件で政府にまで広がった議論を受け、総務省では、ネット上の一方的な書き込みの投稿者情報を開示するための裁判手続きを簡素化するための最終案を11月にまとめています。来年の国会で法案が成立するでしょう。従来の仕組みでは、発信者を特定するまでに多くの時間とコストがかかっていたものを、改正案は情報開示請求にかかる被害者の負担を少なくするもので、この手の訴訟は今後さらに増えるでしょう」(前出・社会部記者)
いきなり裁判所から郵便物が届いたと思ったら、あれよあれよと裁判になって、果ては敗訴で多額な金額を支払うハメに。なんてことにもなりかねないのだ。
もともと安易な気持ちで行いがちなマイナスのネット書き込み。一方で、そのツケを払わされる人間は確実に増えそうだ。
(猫間滋)