12月2日にtoto(スポーツ振興くじ)の対象にバスケットボールを加える改正スポーツ振興投票法が可決・成立し、2022年中にも新しいくじが導入される見込みとなった。そしてその翌日の3日、楽天・三木谷浩史氏をトップにIT企業を中心に結成された「新経済連盟」によって政府の観光政策への提言が発表されたのだが、その中にはさらに「スポーツと賭け事」に踏み込んだ注目すべき項目が盛られていた。
提言そのものは、これまで官民あげて進めてきた観光立国政策がコロナで大きく後退、そこで、ポスト・コロナのニュー・ノーマルの時代も見据えた新たな観光モデルを確立すべし、といった普通な内容。だから、観光の①需要の平準化、②受け入れ体制の整備、③回復に向けた環境整備といった、いかにも経済団体が行いそうな地味な3項目から成り立つ。ところがその中に、「刑法の特例法を措置しスポーツベッティングを全面解禁」との文言が見られるとなれば、事はなかなか穏やかではない。
「主張をよく読むと提言は2段階で成り立っていることがわかります。1つは、コロナで壊滅的な打撃を受けたスポーツ興行の見直しとしてスポーツベッティングを導入、収入をスポーツ振興に充てるという案。もう1つは、ポスト・コロナのインバウンド回復の手立てとしてeスポーツを振興する。そしてeスポーツもtotoやスポーツベッティングの対象とする案です」(ギャンブル事情に詳しい週刊誌記者)
これをさらに読み解けば、おおよそこういったことだろう。
つまり、コロナ禍ではスポーツの試合が行われず、行われたとしても無観客や観客の制限があってプロスポーツの興行収入は激減、経営面で大きな打撃を受けた。そこで、この損失を補うべく新たなスポーツ観戦のあり方としてスポーツベッティングを導入。そしてこの収入をスポーツの振興に回す。また、世界的にeスポーツが人気を得る中、日本でもこれを振興して新たな観光需要の掘り起こしを図る。そのためにもスポーツベッティングを活用、もしくはtotoの対象として、その収入からeスポーツの振興費用を得る。
確かにこれなら理屈として観光振興、プロスポーツ経営、eスポーツの振興の全てが並び立つが…。
「新経済連盟は楽天の三木谷さんらを中心に2010年にeビジネス推進連合会として発足、後に三木谷さんが電力政策を巡って経団連と対立・脱退するのとほぼ同時に連盟と改称して今に至ります。連盟の主張は、三木谷さんが経団連を脱退したことに見られるように、ネット事業者の立場からドラスティックな規制緩和を求めるため、時には周囲と鋭く対立する傾向があります。特に医薬品のネット販売を巡っては国相手に訴訟を起こすなど、争う姿勢で有名です」(経済紙記者)
特に「刑法の特例法を措置」となると、国民の理解を得るのはかなり難しいだろう。最初にtotoの話が出た時にも、「スポーツを賭け事の対象にするのか」との反対世論は大きかった。
ただ、これに先駆けること2カ月前の10月7日、サイバーエージェントは、日本でスポーツベッティングが導入された場合の売り上げ規模を推計。それによると年間7兆円規模にもなるというから、効果は大きい。2019年の中央競馬の売り上げ約2兆8800億円の2倍以上だ。
だが、サイバーエージェントの藤田晋氏は新経連ナンバー2の副代表理事だ。提言の下地作りだった?いや、そんなことはないだろう。
(猫間滋)
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