6月7日に突如、読売新聞が報じた「スポーツ賭博解禁」。記事によると、経済産業省がスポーツの試合結果や内容を賭けの対象とする『スポーツベッティング』の解禁に向けて取りまとめた素案があるとのこと。野球、サッカー、バスケットボールを対象としていて、スマホなどで賭けが出来るという。さらには経産省はスポーツ庁は7月に再開される有識者会議でこれを検討するとまでしている。
この「先行報道」で閣僚たちは火消しを図った。当該の萩生田光一経産相は「事実と違う」とし、松野博一官房長官は「予定ない」とニベもない。ただ茂木敏充自民党幹事長になると、「党内でも様々な議論が行われている」「国民の理解が必要」と、あたかも議論の俎上に乗せる前提があるかのような、かなりの匂わせ発言。こういった温度差を見ると、さては読売新聞にリークして口火を切らせることで、情報を小出しにしつつ「解禁」論議を既成事実化していこうとの腹も透けて見えたりする。
解禁が求められる素地は十分にある。
「しばしば指摘されるところですが、パラリンピック選手の自己負担額は少なくなく、競技を続けていくことの困難さが指摘されています。五輪でも競技によっては強化・育成費は潤沢ではなく、スポーツ振興くじのTOTO(トト)はこの秋にもバスケのBリーグにまで拡大される予定です。維持管理費だけで約10億円かかる新国立競技場は、17年には球技専用にする予定でしたが、財政面から陸上トラックを残すよう4月に明示したばかりと、スポーツを巡ってはあらゆる方面で資金繰りで苦労しているところです」(経済ジャーナリスト)
そこでギャンブル業界に目を転じると、競馬や競輪などの公営競技は、これまでのコロナ禍の逆風にあって絶好調だ。最新期の関連法人の売上は約4兆300億円で、なんとコロナ前より12%以上も増えている。スマホで投票、レースの模様もスマホなどで動画配信されるので、規制知らずだからだ。プロ野球やJリーグなどが密回避による観客動員の減収で苦しんだ一方、こちらは無観客でもマネタイズ可能な上、運営側は関係者間での感染さえ注意すれば良かった。
「これに目を付けたのが、楽天の三木谷浩史さんを代表理事、サイバーエージェントの藤田晋さんを副代表理事として、IT企業を中心にニューエコノミー企業が多く集う新経済連盟です。彼らIT企業の多くが公営競技のネット対応ビジネスを多く手掛けていますが、コロナ禍真っただ中の20年12月に、ニューノーマルに適ったスポーツビジネスの運営方法と、今後世界的な市場拡大が見込まれるeスポーツの振興を兼ねてスポーツベッティングの解禁を求める声明を出しました。そして事実、複数の企業によって政治家へのロビー活動が行われているようです」(同)
読売の記事で、7月の有識者会議再開というのが気になるところ。7月には参院選がある。となれば選挙後にこの議論も政府筋を含めてかなり公になるかもしれない。
(猫間滋)