かねてから体調不良がささやかれていた安倍晋三総理が、主治医の高石官均医師を頼って慶応大学病院に姿を見せたのは8月17日のことだった。
消化器内科の専門医は、潰瘍性大腸炎の悪化を強く疑わせるそれまでの出来事、そして慶応病院での滞在時間が7時間半にも及んだ事実などから、予防医療センターではより専門的で精密な「検査」が行われた可能性が高いとして、次のように指摘する。
「このような場合、より詳しい下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)と上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を実施するはずです。ただし消化管の内視鏡検査を行うには、大量の腸管洗浄剤を飲ませて消化管をカラにする緊急の消化管洗浄を行う必要があります。この前処置だけでも最低3時間くらいはかかるため、滞在時間が7時間半にも及んだこととも符合するのです」
同時に上部・下部消化管の検査をする際、慶応病院では検査時の苦痛を和らげるための鎮静剤や鎮痛剤の投与も併せて行われる。消化器内科専門医が続ける。
「潰瘍性大腸炎の悪化が疑われる場合、下部消化管では大腸から回腸まで、上部消化管では食道から胃、十二指腸までの詳細な病変検索が実施されます。下部消化管検査では潰瘍性大腸炎の悪化の度合いを詳しく調べていきますが、同時に潰瘍性大腸炎のガン化の有無についても注意深く検索されます。また、7月上旬の吐血報道が事実だったとすれば、潰瘍性大腸炎に伴う胃や十二指腸の病変検索、すなわち出血部位の検索も上部消化管検査でくまなく行われたはずです」
一方、これらの精密検査とは別に、新たな「治療」が行われた可能性も指摘されている。慶応病院関係者の証言。
「これまで安倍総理はサラゾピリン、ペンタサ、その後に新薬として登場したアサコールなどのアミノサリチル酸製剤とステロイド製剤によって寛解を得ていましたが、最近は頼りにしていたアサコールも次第に効かなくなってきている。そこで今回、主治医らは副作用の軽さなどから、唯一の選択肢として残されていた全く新たな治療を実施した可能性があります。それは血球成分除去療法です」
血球成分除去療法は右腕か左腕の血管から血液を採取し、カラムと呼ばれる筒状の装置で炎症を引き起こしている血液成分を取り除いた後、その血液をもう一方の腕から戻す治療法だ。対象となるのは主にアミノサリチル酸製剤やステロイド製剤が効かなくなってしまった「再燃患者」だが、この慶応病院関係者いわく、
「効果が認められないケースも少なくありません」
いずれにせよ、安倍総理にとってはまさに悪夢のような7時間半だったと言えるが、中でも主治医らが最も懸念しているのが、潰瘍性大腸炎の「ガン化」だ。
実は、ガン化のリスクは年を追うごとに上昇することが知られている。潰瘍性大腸炎の発症から30年以上が経過すると、ガン化の確率は30%以上に上昇するとのデータもある。17歳で発症した安倍総理の場合、病歴は30年どころか50年近くにも及ぶため、消化器内科専門医も次のように断じてはばからないのだ。
「医学的に見れば、安倍総理の大腸は少なくとも十数年前から『前ガン状態』にあると言っていいでしょう。そして今後、前ガン状態からガンを発症した場合、即時の大腸全摘術が推奨されるため、総理としての執務どころか、政治家としての仕事を続けていくことすら難しくなるでしょう」
安倍総理は今、支持率も病状も、掛け値なしの瀬戸際に追い込まれているのだ。