「もしも“疑惑”が事実なら大問題ですよ。いまだに薬局の店頭では品切れが続いているし、まったく手に入らない状態。あのイソジン発言でいちばん迷惑をこうむっているのが歯科医業界。歯科医の医療現場でボビドンヨード配合の薬は必要不可欠。すでに大阪府歯科保険医協会は8月6日に『医療機関と府民を混乱に陥れたことを真摯に受け止めよ』とする抗議文を吉村洋文知事に送っていますが、昵懇の仲と言われる一部のテレビ番組だけには事前に伝えておいたとなれば、医療団体の怒りはさらに増すこと必至でしょう」(社会部記者)
発端は8月4日に開かれた「イソジン会見」だった。吉村洋文大阪府知事は、会見場にうがい薬をズラリと並べ、「うそみたいな本当の話」としたうえで、「みなさまもよく知っているうがい薬を使ってうがいをすることによって、コロナの患者さん、コロナがある意味、減っていく。コロナに効くのではないかという研究が出ました」とブチあげたのだった。
この会見は昼の情報番組「ミヤネ屋」(読売テレビ)で生中継され、その直後には全国のドラッグストアでボビドンヨード配合のうがい薬が買い占められるという騒動に発展。
冒頭のように、4000人以上の歯科開業医が会員となっている大阪府歯科保険医協会は、「知事の不用意な発言は、医療現場と府民に混乱をもたらし、治療にも支障をきたしている」と抗議文を送付していた。そしてこの怒りをさらに増幅させそうな出来事が発生したという。
「8月10日に放送された『サンデー・ジャポン』に、会見当日の『ミヤネ屋』に出演していたコメンテーターが出演。そのコメンテーターは会見が行われる1時間以上も前に、この会見のおおまかな内容を知らされていたというんです。もちろん実行はしていませんが、もしも出演者を含む番組関係者が、事前に薬品メーカーの株を購入していたら、利益が得られた可能性についても触れています。吉村府知事は『イソジン会見』において、『情報が漏れたらいけませんから』として、このうがい薬の会見内容については、同席した松井一郎大阪市長とごく一部の医療関係者しか知らないと述べていました。ところが、『サンジャポ』でオンエアされたコメントが事実なら、『ミヤネ屋』には事前に“イソジン情報”を漏えいしていたことになります。かねてから大阪府知事と『ミヤネ屋』の癒着ぶりは業界では有名でしたからね。『イソジンがコロナに効くっていう面白い会見を開くからぜひ生中継してください』なんて事前に通告していたとしたら、医療団体からさらなる猛批判を浴びることになるでしょう」(医療ジャーナリスト)
たしかに、懇意にしているテレビ番組には事前に伝えて、結果的に大混乱を招いた医療関係者にはいっさい知らされていなかったとなれば大問題だろう。この「サンジャポ発言」を受けて、注目された8月10日の「ミヤネ屋」だが、司会の宮根誠司は「夏休み」を理由に番組を欠席。情報漏えい疑惑について、説明することはなかった。
「たかがうがい薬と侮ってはいけません。ボビドンヨード配合の薬品は、抜歯治療などになくてはならないもの。すでに在庫が切れかかって頭を悩ます歯科医院も出てきており、ただでさえコロナ禍で経営状態がよくなかったのに、この吉村発言が追い討ちをかける結果となっています。吉村知事にしても、宮根さんにしてもこの情報漏えい疑惑についてはきちんとした説明が求められるでしょう」(前出・社会部記者)
うがい薬の品薄状態が続けば、「臨時休業」の看板を掲げる歯科医が出てきてもおかしくないかもしれない。
(倉田はじめ)