高齢被害者続出「新型マルチ商法」の闇手口(3)繰り返される「豊田商事商法」

 歴史は繰り返す。80年代に日本中を震撼させた「豊田商事事件」は、ありもしない地金を売りつける詐欺犯罪だったが、マルチ商法の世界では現在もなお、純金が売り文句に使われていた。

「純金相場はバブル期以上の高レートを維持しているので、安定した投資先として注目を集めています。金の採掘を手がける海外の事業者が販路を広げるために会員を募集しています」

 こう言って募集をかける業者に遭遇したらご用心。6万円から18万円の入会費を払って会員になれば、4割引で純金を購入できるとのことだが、

「金の購入費の最大40%のポイントバックをうたっています。つまり100万円分の金を買えば40万円分のポイントがもらえて、そのポイントでさらに金が買える仕組みだそうです。また、会員を勧誘するごとに、さらなるポイントが発生するのですが、購入しても実際に金の現物が届くわけではないので、かつての豊田商事の手口となんら変わりません」(社会部記者)

 これまでマルチ商法の実例を紹介してきたが、どれもうさんくさいものばかり。にもかかわらず、その被害がなくならない理由のひとつに、人の優しさにつけこむ闇の勧誘手口があった。

 被害者男性が歯ぎしりする。

「いくら怪しくても信用した一番の理由は、その儲け話を持ちかけてきたのが親戚だったから。まさか自分の信頼する人が、大損するような商材を紹介するなんて思わないでしょう」

 親戚だけではない。中学校時代の友人やカフェで知り合った異性もまた、悪徳業者の手先になりえることを十分に考慮しておくべきだ。もしもセミナーに足を運んでしまったら最後、業者はあらゆる手段を使って契約へと追い込んでくる。

 詐欺犯罪に詳しいジャーナリストの西島ゆうじ氏が明かすには、

「あるマルチ商法のグループは、勧誘セミナーに大量のサクラを動員していました。出席者20人のうち、本当の標的はたった3人。それ以外は全員、業者が用意したサクラで、『契約させてください』『オレが先だ!』とみんなでひと芝居打つわけです。そうした手口ですっかり洗脳されて、怪しげな高額契約を結んでしまう。1000万円単位の投資商品なら、サクラを大量に雇っても十分に元が取れるわけです」

 桜とサクラ。意味は違えど、ダマシの道具に使われたとは皮肉な話だ。

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