習近平が怯える大規模テロ アサド政権崩壊で蠢くトルキスタン・イスラム党

 50年以上にわたってシリアで実権を握ってきたアサド政権が、シリア解放機構を中核とする反政府勢力によるクーデターによってあっけなく崩壊。暫定政府「シリア解放機構」は、民族や宗教、宗派の対立を超えてシリア再建を進め、穏健路線に舵を切り、諸外国とも良好な関係を築く姿勢を示している。

 多くの国々はそれを前向きに受け止めているものの、中国の習近平国家主席はそれを複雑な眼差しで眺めている。今回のクーデターではシリア解放機構が主体となったことは間違いないが、中国が長年警戒するトルキスタン・イスラム党も共に戦ったためだ。

 トルキスタン・イスラム党は別名、東トルキスタン・イスラム運動とも呼ばれ、中国の新疆ウイグル自治区の解放を強く掲げ、中国を敵視し攻撃を続けている。例えば2008年の北京夏季五輪の際、トルキスタン・イスラム党を名乗る組織がテロ実行を示唆する内容の動画を公開。その6分間のビデオでは、五輪のロゴが燃やされ五輪会場が爆破される様子が映し出され、イスラム教徒らに列車やバスなどの公共交通機関を含め、中国市民の集まる全ての場所を避けるよう警告した。

 また2013年10月の北京・天安門における車両突入事件、翌年年3月の雲南省昆明市にある昆明駅で発生した無差別殺傷事件、同年4月の新疆ウルムチ市のウルムチ南駅における爆破事件などで相次いで犯行声明を出している。

 近年はアフガニスタンとシリアに拠点を持ち、21年夏にイスラム主義勢力タリバンがアフガニスタンの実権を握って以降、中国はタリバン政権に同国で活動するトルキスタン・イスラム党の活動を抑えるよう再三に渡って要求している。国連によると、アフガニスタンにはトルキスタン・イスラム党のメンバーが500人ほどいるという。しかし一方、シリアには1500人から3000人がいるとの報告があり、習氏はシリアの行方を警戒しているだろう。

 今後のシリア情勢がどうなるかは分からないが、トルキスタン・イスラム党はシリア解放機構と良好な関係にあり、シリアが反中国テロの温床となる可能性もある。

(北島豊)

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