トランプ政権発足の日がいよいよ近づいてきた。トランプ氏は相次いで対中強硬派を政権の要職に起用しており、中国を中心に諸外国に対して関税発動をちらつかせて威嚇、実際に発動することで、最大限の譲歩や利益を相手国から引き出そうとするだろう。
トランプ氏は選挙戦の最中、中国製品に対して60%、その他の国々からの製品に10%~20%、メキシコからの輸入車に200%の関税を示唆していた。その後、関税率は変わったものの、大統領就任初日から中国製品に10%の追加関税、カナダとメキシコからの全製品に25%の関税導入を発表している。トランプ氏は、特に安価な値段で大量流入する中国製品に不満を覚えており、追加関税は強化されていくだろう。
一方の日本製品については、今のところ直接標的にするような関税導入は発表されていない。しかし、カナダの25%を発表したように、トランプ氏は同盟国や友好国であっても自国の利益を阻害するものには容赦なく関税を導入するとみられ、決して対岸の火事ではない。
むしろ、日本もトランプ関税の餌食になる恐れがある。理由は2つだ。まず、トランプ氏は米国の対外貿易赤字を基準にしていると見られる点。政権1期目では、蓄積する米国の対中貿易赤字を打開する目的で最大25%の関税を課す措置を次々に打ち出したが、この時、米国とって中国が最大の貿易赤字国だった。そして、メキシコも同様に米国にとって最大の貿易赤字国となっており、日本は中国やメキシコに次いでいるのだ。2023年に日本の対米貿易黒字は8.7兆円となり、トランプ氏が前回の選挙戦で勝利した16年に比べ1.9兆円ほど増えている。そんなことから、米国の対貿易指標をもとに関税対象国を選定してくる可能性がある。
もう一つ、トランプ氏はNATOや日本など軍事同盟国の貿易支出額に不満を持っている。GDP比で3%以上の防衛支出を求めているが、日本やNATO加盟国の多くはその水準に至っていない。今後、日本に対して貿易費の増額を求め、それによって米国製の戦闘機や武器を買えと圧力を加えてくるのは想像に難くない。それを実現させるために、関税という手段で圧力を加えてくることもあろう。
(北島豊)