年齢を重ねるごとに体力は衰えていく。とはいえ、若い頃よりもエネルギーが減ったからと、家に引きこもりがちになるのは大問題である。度を超した出不精の先には、悲惨な結末が待ち受けているのだ。その予備軍をチェックシートであぶり出す!
世の中になかなか浸透しない医学的概念が「フレイル(虚弱)」だ。14年に日本老年医学会が健康と要介護の間の「虚弱状態」として提唱するも、正式な病名ではないため定着していない。「人生100年時代」を健康に生き抜くためにも知っておいて損はないのだが‥‥。京都市右京区にある「なか整形外科」の樋口直彦理事長が解説する。
「語源は医学用語で『虚弱』を意味する『frailty(フレイルティー)』。端的に『要介護』の数歩手前の状態を指しています。加齢によって筋力や心の活力が衰えるのは避けられませんが、まったく抗うことなく放置してしまうと、そのまま寝たきりになってしまいます。つまり、フレイルを未然に防ぐことが健康寿命を延ばすことにつながるのです」
まず第1にセルフチェックしたいのが、筋肉量の減少具合。ふくらはぎを囲うように、両手の親指と人差し指で輪っかを作ってみてほしい。
「文字通り『指輪っかテスト』と呼ばれるもので、ふくらはぎの1番太い部分で測ります。もしも、すき間が空いてしまうなら『サルコペニア』という状態にまで骨格筋量が減っている可能性が高い。ちなみに、筋肉は20代をピークに1年ごとに1%ずつ減少すると言われています」
筋トレなどの運動習慣がないままシニアを迎えると非常にマズい。およそ70歳を過ぎた頃から、自覚症状が現れるようになる。
「ちょっとした段差につまずいて転倒したり、階段を昇り降りするのに手すりが必須になったりと、体の衰えは見るに明らか。歩くスピードが遅くなる人も少なくありません。片側4車線などの長い横断歩道では一度の青信号で渡りきれず、途中の安全地帯を経由せずにはいられないでしょう。細かい症状まで付け加えるならば、握力の低下で瓶やペットボトルのフタが外せなくなることも」
同時進行で衰えてしまうのは「食べる力」だ。口の機能不全がさらなる悪循環を引き起こすという。
「顎や舌が衰えてしまう『オーラルフレイル』によって、食べこぼしや硬いものが食べにくくなるばかりか滑舌まで悪くなってしまいます。具体的に裂きイカやたくあんを嚙み切れなくなるとかなり怪しい。もちろん飲み込む力も弱くなってしまうので、誤嚥やむせ返しが増えてしまう。食べられる食品にも偏りが出てしまい、栄養状態が悪化。身体の衰えに拍車をかけることになります」
特に口腔ケアを疎かにしがちな人は要注意。歯の本数が少なくなればなるほどオーラルフレイルのリスクは跳ね上がる。
「残った歯にかかる負荷が増えてしまい、最終的に全部の歯を失いかねません。歯がないと咀嚼はおろか唾液もきちんと分泌されなくなります。だんだんと食事が億劫になって全身が痩せ細ってしまうのです」
まさに、食えなくなってからでは手遅れなのだ。
【「フレイル(虚弱)」チェックシート(15)】
セルフチェックで8点以上なら近くの医療機関へGO!
(1)朝ごはんを食べない 1点
(2)お茶や汁ものでむせ返ることがある 1点
(3)1日に1度も誰かと食事をともにしない 1点
(4)日用品の買い物以外で外出をしない 1点
(5)瓶のフタが外せなくなった 1点
(6)友達と呼べる他人がいない 1点
(7)裂きイカやたくあんを嚙み切れない 2点
(8)ちょっとした段差で転んでしまう 2点
(9)歩くスピードが遅い 2点
(10)会話中に聞き直すことが増えた 2点
(11)家族からテレビやラジオの音量が大きいと注意される 2点
(12)今日が何月何日なのかわからない 2点
(13)周囲からいつも同じ話をしていると言われる 4点
(14)15分以上歩くことができない 4点
(15)1人では立ち上がれない 8点
(つづく)