四季を通じて流通するアジの干物。EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などのオメガ3脂肪酸を豊富に含み、動脈硬化や認知症の予防など、健康効果に注目が集まっていることから、お歳暮でいただいた方も多いのではないだろうか。
アジの干物といえば、グリルやフライパンなどで「焼く」のが定番だが、近年、注目されているのが「煮る」という調理法だ。お客に薦めているという鮮魚店のスタッフに聞いた。
「昔からある調理法で、正しくは『湯煮』と言います。大き目のフライパンでたっぷりのお湯、そこに酒か白ワインを少々入れて、弱火で5分ほど煮るだけ。ポイントは沸騰させないこと。そしてアクをていねいに取り除くこと。弱火でじっくり煮るのがポイントで、全体に火が通って、ふっくらとした仕上がりに。グリルで焼くと、調理後の洗い物が大変ですからね。『一度食べたらやめられない』と評判ですよ」
実際に調理してみた。干物をお湯に投入することに、じゃっかん抵抗感はあったものの、そっと身が崩れないように入れると、ふんわりと潮の香りがたちのぼった。グラグラと沸騰しないように火加減に気を配ること5分、アジの干物が茹であがった。
実際に食べて気づいたのは、身がふっくらとしている点。ホクホクとしたアジの身の歯ごたえや旨味はそのままに、焼きムラがなく、しっぽから首まで全体にくまなく火が通っている。グリルで焼くと、皮部分がこげついて、イヤな匂いがするものだが、それもない。そして後片付けはフライパンを洗うだけ。「ムラなくホクホク」「後片付けが楽」というのが、「湯煮」の2大メリットといったところだろうか。
「アジだけでなく、カレイやホッケなど、他の干物にも応用できるのが『湯煮』のすごいところ。ただ、質の悪い干物を使うと、調理中に身が崩れてボロボロになってしまうので、注意が必要です。全体的にさっぱりと仕上がるので、ポン酢やニンニク醤油など、味付けのバリエーションが広がるのも支持される理由かもしれません」(前出・鮮魚店スタッフ)
アジの干物は「煮る」が正解。スーパーや魚屋で形のいいお買い得の干物を見つけたら、ぜひ一度試してほしい。
(フードライター・石川ともこ)