【中国】習近平がトランプ政権を孤立させる日本・欧州との「分断」「抱き込み」

 米国大統領選挙の結果、ハリス氏に圧勝したトランプ氏。ペンシルベニアやウィスコンシンなど激戦7州を全勝しただけでなく、議会の上院と下院では共和党が過半数を占めるなどトリプルレッドの状況となっており、政権運営が極めてやりやすい環境を手に入れた。

 トランプ氏は中国に対し超強硬姿勢に徹するとみられ、外交・安全保障政策で重要な役割を担う国務長官には対中強硬派のマルコ・ルビオ上院議員が起用されるようだ。ルビオ氏は新疆ウイグル自治区における人権問題を問題視し、中国による軍事的挑発に毎日のように直面する台湾を積極的に支援する姿勢を貫いている。安全保障担当の大統領補佐官にも対中強硬派のマイク・ウォルツ下院議員が起用されるが、ウォルツ氏は軍備増強が進む中国海軍に対抗するため、米海軍の艦船や装備の増強を求めている。トランプ政権が、高関税を武器に中国に攻撃を挑んでいくことは間違いない。

 一方、そもそも米国大統領選を悲観的な眼差しで見てきた中国は、ここにきて一つの戦略を描いているようだ。第2次トランプ政権が中国に対し、保護貿易的姿勢に徹するのは明らかであるが、その保護主義や単独主義を警戒しているのは中国だけではない。

 第1次トランプ政権の際、米国はパリ協定やTPPなどの国際協定から一方的に離脱し、国連やNATOを軽視する姿勢を鮮明にしたことで、英国やフランス、ドイツなどの欧州と米国との関係は不可逆的に冷え込んだ。それを改善したのはバイデン政権であり、第2次トランプ政権の発足によって再び悪化する可能性は高い。そこで中国は米国の保護主義、単独主義に対し「自由貿易体制への脅威」と強調することで、米国と欧州の間に分断をもたらし、経済面で欧州との関係を強化することを狙っている。

 そしてこの戦略は、日本にも適用される。バイデン政権は対中国で日本やオーストラリアなどとの同盟国と多国間協力を強化してきたが、その動きはトランプ再来によって後退することは避けられない。しかし、それは中国にとって米国を孤立させる絶好のチャンスでもある。日米の経済安全保障上の協力に楔を打ち込み日本を米国から遠ざけるため、日本に対する姿勢を緩和させる可能性があろう。

 習近平主席は米国を相手にせず、他国との協力を強化する。それによって、米国を孤立させる戦略を重視してくるだろう。

(北島豊)

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