──そんな彼女が、局アナ時代からライフワークとし、今も活動の“主戦場”となっているのが「伝統芸能」である。
フジは歌舞伎の名門・中村屋ファミリーの密着番組を30年以上やっているのですが、フジの役員で番組の監修をしていた故・塚田圭一さんと先輩の野間脩平アナウンサーに皆で歌舞伎に連れて行ってもらい、それがきっかけでどっぷりハマりました。
公演後にはアナ室の10人ほどで食事に行くのですが、そこには18代目・中村勘三郎さんがいらしてくれて、贅沢な時間だった。勘三郎さんはお芝居が大好きな方で、ずっとお芝居の話をしていただけるのが楽しみでしたね。
その後、中村屋ファミリーの特番の監修を私が担当するようになり、歌舞伎のイヤホンガイド解説の仕事までスタート。見どころを解説しています。
今は、勘三郎さんの長男・勘九郎さんと次男・七之助さんを中心とした中村屋の全国巡業に同行して、トークコーナーの担当です。
ニッポン放送でも特番「吉崎典子物見遊山てんこ盛り!」で、歌舞伎俳優をゲストに招いてお話を聞いています。歌舞伎座には安く気軽に見ることができるサービスもあるんです。「一幕見席」といって初心者が体験するにはピッタリです。若い方にぜひ見てほしいですね。
「春風亭一之輔のカブメン」というCS放送番組の進行もやっています。歌舞伎俳優のリクエストに応えて、一之輔師匠が落語を一席やるという内容です。そうしたご縁もあって、一之輔師匠の落語会にも足を運んでいます。
他には14~15年前から、人間国宝・神田松鯉先生の講談教室にも。毎年、朗読舞台をやっているのですが、「朗読には講談がいい」と勧められて始めました。フジ出身ということで「釈亭ふじ松」という高座名もいただきました。年に1度、発表会もあるんですよ。
──伝統芸能への傾倒のみならず、在職中から続けているのはアナウンススクール「フジテレビアナウンストレーニング講座アナトレ」の専任講師も同様だ。退社後も希望して残った。
印象に残っている生徒? 森香澄ちゃんかな。とにかくかわいくて、キュート。自分のあざとかわいさをちゃんと理解しながら、自己分析していました。就活って自己分析が大事なんですよ。香澄ちゃんは本当によく自分のことをわかっていましたね。今の大活躍を見ると、改めて自己分析って大事だなと思います。
あとテレビ朝日の安藤萌々ちゃんも印象深いですね。当時は男気のある感じのお嬢さんで、「あなたはその男気をアピールしたらいいわよ」ってアドバイスしていました。今はしっとりキレイなお嬢さんになって。ゴルフ部のキャプテンをしていたこともあって、体力とやる気に満ちていて、男女関係なく好かれるタイプ。今、「報道ステーション」でメインを張って頑張っているのが本当にうれしいです。
私はもともと東京学芸大学出身で、教師になるために入学しました。結果的にアナウンサーの道を選びましたが、今は全国各局に教え子のアナウンサーがいます。結局「教える」ということにたどり着けたかなと思っています。
吉崎典子(よしざきのりこ)1984年、フジテレビ入社。「おはよう! ナイスデイ」「報道2001」「FNNスーパーニュース」など主に報道・情報番組で活躍した。歌舞伎への造詣も深い。2021年の定年退職後から「私の正論」(ニッポン放送)で司会を務めている。「婦人画報」でコラム「吉崎典子の歌舞伎耳寄り話」も執筆。