【北朝鮮】金正恩氏がトランプ氏の「彼は私に会いたがっている」に上から目線で食いついた“ホンネ”

「私は北朝鮮の金正恩委員長とうまく付き合った。北朝鮮は最近また挑発を続けているが、我々がまた会えば私は彼らとうまく付き合うだろう。彼はおそらく私に会いたがっているはずで、私を懐かしく思うはずだ」

 7月18日、ウィスコンシン州ミルウォーキーの屋内競技場施設「ファイサーブ・フォーラム」で開かれた共和党大会の演説でこう述べ、支援者から喝采を浴びていたトランプ前大統領。トランプ氏は大統領在任当時、平壌を電撃訪問し、正恩氏と初の歴史的朝米首脳会談を実現させ世界中をアッと言わせたのは事実。しかし、その後行われたハノイ会談では何の合意もなく決別した形で終わり、成果は出せなかった。

「ただ、正恩氏はその後も『ラブレター』と呼ばれる親書をトランプ氏に送り続け、トランプ氏が退任するまで2人の個人的な関係は続いていたと言われている。確かに22年に公開された27通に及ぶ往復書簡の文面を見ると、当初は正恩氏のほうがトランプ氏を『親愛なる閣下』『誰も成し遂げられなかった偉業』などと持ち上げ、自身のほうから歩み寄る姿勢が感じられます。しかし後半には、依然収まらない米韓軍事演習と進まない交渉にいらだちを見せ、『私は明らかに気分を害しており、この気持ちをあなたに隠すつもりはありません。本当に、極めて不愉快です』を不快感をあらわにしている。トランプ氏退任後の関係についてはわかりませんが、終盤ではかなり微妙だったことは間違いありません」(北朝鮮ウォッチャー)

 そんないきさつがあってなのか、正恩氏はトランプ氏による「私に会いたがっているはずだ」発言に対して黙殺していた。だが23日になり突然、朝鮮中央通信が、「朝米対決の秒針が止まるかどうかは米国の行動いかん」との見出しで論評を掲載。そこには「うまくやった」というトランプ氏の発言に対し「朝米関係の展望に対する未練を膨らませている」、さらに続けて「トランプは国家間の関係に肯定的な変化をもたらさなかった。どの政権になっても乱雑な政治風土は変わらず気にしない。今後、対決の秒針が止まるかは全面的にアメリカの行動次第だ」と主張。つまり北朝鮮としては、あくまで米国に対する対決姿勢は維持するが、今後の米大統領選挙の行方を見ていく、との立場を対外的に示したというわけだ。

「北朝鮮が公式な形で談話を発表したのは意外。朝鮮中央通信で活字になっている内容は、そのまま正恩氏の言葉でもありますからね。米国の出方次第と相変わらず上から目線で言っているものの、トランプ氏と一日も早く交渉のテーブルにつきたいという正恩氏の思惑が透けて見える。ただ、正恩氏とトランプ氏との直接交渉が再開した場合、中国の習近平主席がどう出てくるか。また、北朝鮮と事実上の同盟関係を結んだロシアのプーチン大統領もなんらかの動きを見せるはずで、トランプ再選なら世界が大きく動きだすことは間違いないでしょうね」(同)

 ちなみに、朝鮮中央通信が掲載した論評の中に、バイデン氏の名前は一文字もなかったというが、まさにツワモノどもの夢の後、ということか…。

(灯倫太郎)

ライフ