パリ五輪の開会式まであと約1カ月となった。コロナ禍もあって東京五輪が2021年に開催されこともあり少し早い感じを受けるが、世界中の注目がパリに集まりスポーツ祭典のモードに入る。
しかし、喜んでばかりはいられない。実は、今回のパリ五輪ではテロが起きる可能性が非常に高いのだ。今年3月、ロシアの首都モスクワの郊外にあるコンサートホールで武装した男4人組による銃乱射事件が発生し、100人以上が犠牲となった。この事件は日本国内でも大々的に報道されたが、実行したのはアフガニスタンを拠点とするイスラム国だった。そして、フランスのマクロン大統領は事件後、ロシアでテロを起こした実行犯たちはフランスでも同様のテロを計画していたと明らかにし、国内のテロ警戒レベルが最高水準に引き上げられた。
最近、ドイツやオランダなどではアフガニスタンを拠点とするイスラム国の関係者たちが相次いで逮捕されるケースが報告されており、欧州はテロへの警戒が非常に強まっているのだ。
テロ組織はテロの実行場所とタイミングを極めて重視する。パリという大都会でしかも五輪となれば、テロ組織にとっては大きなチャンスとなる。フランス国内では開会式が近づくにつれ、国際空港や主要駅、繁華街、エッフェル塔や凱旋門、ルーブル美術館など各地でテロ警備が厳格化されることになり、緊張感がとても漂う環境になろう。
1972年のミュンヘン五輪では、パレスチナの武装集団がイスラエル選手団の宿舎を早朝に襲撃し、イスラエル人選手11人が犠牲となる悲劇が起こっている。現在もイスラエルによるパレスチナへの容赦のない攻撃が続いており、パリ五輪ではイスラエル選手団への警備は最も厳重になるだろう。パリ五輪が第2のミュンヘン五輪にならないことを祈るばかりだ。
(北島豊)