安いのは猟友会のクマ駆除だけじゃない!「消防団員」の激安報酬問題

 今年5月、ヒグマ駆除に参加した場合の地元猟友会への日当がたったの8500円であることが新聞・テレビで大きく報じられ、「安すぎる!」と世間から非難を浴びた北海道奈井江町。だが、これよりも安いと以前からも問題視されているのが消防団員への報酬だ。

 総務省「非常勤消防団員の報酬等の基準」によれば、災害に関する出動は1日8000円が標準となり、これ以外の活動は日当4000円。消防団員は消防士と違って本業が別にあり、報酬こそ発生するがボランティアに近い。

 ただし、火災発生時には現場に出動して初期消火活動や救助活動をはじめ、パトロールや訓練、地域のイベントへの参加などかなり忙しい。ゆえに最近は人手が確保できず、消防団の統廃合や団員の高齢化が進んでいる。

「猟友会のヒグマ駆除も命がけの仕事ですが、近年は任務中に亡くなるというのはレアケース。しかし、消防団員は『令和2年版消防白書』によると令和元年だけで12人が公務中に亡くなっています。つまり、殉職者の数や危険度という点では消防団のほうが圧倒的に高いんです」(防災専門誌編集者)

 数年前まで地元の消防団だった40代の男性Tさんは、辞めた理由のひとつに「報酬の安さ」を挙げる。

「消防団の仕事があるから家族旅行も滅多に行けませんし、夜や土日にも集まりがあるから休む暇がないんです。もちろん、タダ働きよりはマシとはいえ、時給に換算すればアルバイトやパート以下。最初は地域のためにと頑張っていましたが、それにも限度があります」(Tさん)

 また、消防団の濃密すぎる人間関係も人手不足の原因になっていると指摘する。

「昔の運動部のような年功序列のタテ社会なんです。若い団員が少ないから私は40代になっても団員内では下っ端。年上の団員からパワハラまがいのことをされることは日常茶飯事でしたし、そこまでひどくなくても閉鎖的な雰囲気に嫌気が差して辞める人は多いって聞きますね」(同)

 もちろん全国すべてがこうした環境ではないだろうが、報酬の安さだけが問題ではないため事態は思った以上に深刻なようだ。

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