ルノーの人事介入も!日産・西川社長辞任で勃発した「後任」を巡る暗闘

「SAR(ストック・アプリケーション・ライト)」と呼ばれる、株価連動型報酬での水増し問題で実質上の“解任”が決定した日産の西川廣人社長。同社では10月末までに後継者を決定するとしているが、後任候補ではかばかしい声を聞かない。

「日産では内外を含めて10人ほどの候補者リストを作成してその中から後任を絞り込むとしています。それまでは取締役兼代表執行役員兼COO(最高執行責任者)の山内康裕氏が西川社長の職を代行しますが、結局は山内氏の横滑りに落ち着くんじゃないですかね」
 
 とは、経済ジャーナリスト。会社は今年6月の株主総会で、指名委員会等設置会社に移行してガバナンスの確立を図っていた。その際に設置された監査委員会での調査が西川氏を退任に追い込んだが、調査報告書の公開は見送られ、SAR疑惑への追及は中途半端なものにとどまっている。

「上への忖度が常態化しているんです。西川氏は『独裁』と言われたゴーン体制下で副社長に就任して以来、13年にわたって経営に君臨してきた人物ですから“同じ穴のムジナ”。結局はSAR問題で馬脚を表した形ですが、その前に自浄作用が働いていないのが今の日産を象徴しているように思います」(同前)

 しかも、西川体制下ではルノーとの関係は悪化し、2019年4〜6月期で純利益が前年比94%減と業績は悪化、「そもそもが社長の器でなかった」との評価が聞かれる。

 だが「ポスト西川」で会社の危機はどこ吹く風、残された役員間での“暗闘”が噂される。

「西川氏は後任について『いっそ若返りを図りたい』と語っていましたが、それでは西川氏の院政につながりかねないと考えた古参役員が西川氏に辞任を迫ったとの見方があります」(全国紙記者)

 そして、この辞任を迫ったのが山内氏なのだ。山内氏が口火を切ると、仏ルノー会長のジャン・ドミニク・スナール氏が追随、早期辞任賛成派と反対派との間で激しい議論となったという。

 ゴーン騒動から年が明けた今年、曲がりなりにも好業績を支えたゴーン時代の上級役員の複数が日産を去っている。業績が悪化した日産に対し、ルノーの人事介入も予想される。日産が正念場を迎えるのはこれからかもしれない。
 
(猫間滋)

ビジネス