糖尿病治療薬「GLP-1」をダイエット目的で使用し、健康被害が相次いでいるとして、厚生労働省は29日、WEB上の医療広告ガイドを見直す方針を示した。
GLP-1はテスラCEOのイーロン・マスク氏らが「劇的にやせた」と報告したことで米国で人気が爆発。日本でも、特に女性の間で「やせ薬」として認知されており、美容目的での使用が急増。投与すると血糖値が下がるほか、脳に直接作用して食欲を抑制、また、胃腸の動きを抑え、満腹感が持続する効果があるという。飲み薬と注射があるがダイエット目的としては未承認のため、自由診療による全額自己負担で処方を受ける人が後を絶たない。
「美容クリニックではオンライン診療を行い、GLP-1を患者宅に送付。患者は自宅で気軽に服用できるため、近年かなりの広がりを見せています。費用は1ヵ月で5000円から2万5000円程度とばらつきはありますが、驚くほど高額なわけではないため、興味本位で始める人が急増しています」(医療ジャーナリスト)
一方、健康へのリスクを指摘する声も多い。GLP-1は主な副作用として、吐き気、頭痛、消化器の不調、めまいなどがあり、中には急性すい炎や胆のう炎などが発症するケースもあり、実際に救急車で運ばれた人もいるという。
NHKの取材では、大手検索サイトに表示された20の医療機関にコンタクトを取ったところ、17の医療機関で「処方する」と判断されたという。中には看護師の問診のみで処方した医療機関もあったというのだから、国が定めた「オンライン診療のガイドライン」から明らかに逸脱しているといっていいだろう。
また、ダイエット目的で購入する人が増えたことで、世界的にGLP-1の供給不足を招いており、本来必要としている糖尿病患者に届かないという事態も発生している。
「簡単にやせることができる」と安易に手を出すのはやめたほうが賢明だろう。
(ケン高田)