女子マラソン・前田穂南、日本記録更新の裏に「アシックスvsナイキ」熾烈シューズ競争

 1月28日に行われた大阪国際女子マラソンで、2時間18分59秒の日本新記録をマークした前田穂南。野口みずきが05年のベルリンマラソンで出した2時間19分12秒を19年ぶりに更新した。前田は21年の東京五輪では直前に故障して33位に沈み、以降は体調不良などに悩まされた。慣れないシューズへの悩みもあったそうだが、偉業達成の裏にはそのシューズが秘密兵器となった。

「前田選手が履いているのはアシックスの厚底シューズ『メタスピードスカイ』です。今でこそ多くの選手が厚底シューズを使っていますが、前田選手はずっと薄底でした。それでも厚底で成果を出す時代の趨勢には逆らえず、厚底に切り替えたのですが、なかなかフィットしなかった。本人は『脱いで走りたい』と言い、所属先の天満屋の武冨豊監督も『シューズとケンカしているようだ』と表現するくらいでした。ところがおよそ1年経ってやっと慣れたことで今回の結果につながりました」(スポーツライター)

 そしてこの前田の復活は、「アシックスの復活」をも印象付けることになった。

「日本人選手のシューズの主流はアシックスかミズノ…というのは昔の話。17年にナイキが厚底シューズを投入するや、レース用ランニングシューズのトレンドは一変。旋風を巻き起こし、21年の箱根駅伝ではアシックスのシューズを履く選手はゼロというところまで落ち込みました。17年以後、危機感を覚えたアシックスは厚底の開発に着手し、今年の箱根駅伝では、最多はナイキに譲ったものの、選手の利用シェア24.85%の2位まで巻き返していたのです」(同)

 そして今回の結果で、アシックスの厚底シューズに一段と大きな注目が集まっているのだが、前田選手がフィットするまで1年もかかったのだから、素人が履きこなすのは大変かもしれない。アシックスのHPでも、トレーニング効果やリスク分散のためにレースや練習の種類によってシューズの履き分けを推奨している。

(猫間滋)

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