北朝鮮が21日午後10時過ぎ、予告していた「人工衛星」と称するミサイルを発射した。日本政府の発表によれば、ミサイルは同国北西部・東倉里から南方向に向け発射された模様で、沖縄本島と宮古島間の上空を太平洋へ通過。分離した後、日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したものの、地球周回軌道への衛星投入はまだ確認されていないという。
「はたして、このミサイルがロシアの最新技術を取り入れた『軍事偵察衛星』を搭載したものなのかどうかはわかりませんが、日米間、特に隣の韓国は再三、ミサイル打ち上げに際しては強硬措置を取ると警告してきましたからね。両国間における一触即発の緊張が高まることは必至でしょう」(北朝鮮ウォッチャー)
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日早朝、打ち上げは成功し12分後には軌道に進入したと報道、打ち上げには現地で金正恩総書記が立ち会い、技術者らを称えたと伝えている。北朝鮮は今回の打ち上げを「戦争準備態勢の強化に大きく寄与する」として威圧したが、そんな正恩氏の悪名がまた別の意味でクローズアップされている。
「実は、米首都ワシントンに拠点を置く迫害監視団体『国際キリスト教コンサーン』(ICC)が今月1日、キリスト教徒とその信仰を最も迫害している10カ国と6つの組織、5人の個人を取り上げた最新の年次報告書を発表したのですが、その中でトップクラスに名前が挙がったのが北朝鮮と正恩氏だったことで、世界のキリスト教徒から大きな批判が巻き起こっています」(同)
報告書によれば、北朝鮮には最大で40万人のキリスト教徒がいるとされているが、見つかれば即逮捕され、投獄や拷問、あるいは処刑される危険があり、しかも逮捕者だけでなく、その家族や関係者もまた処罰されることから、北朝鮮でキリスト教を信仰することは「信じがたいほど危険なもの」だと伝えている。
「報告書に記される事例の中には、自宅で聖書が見つかった夫婦が2歳児も含め終身刑を宣告された、聖書を倉庫に放置していた女性が密告され拷問のうえ処刑された、といった記述もあります。金政権にとってキリスト教はアメリカ帝国主義の象徴であり、金体制の安定を脅かす存在。つまり、キリスト教を信仰することは、すなわち政治犯罪を犯しているという位置づけなのです」(同)
北朝鮮は2020年12月、「反動思想文化排撃法」を施行。他国文化や思想の取り締まりを強化したが、宗教迫害の事例も急増。特にキリスト教の要素を含む韓国ドラマを視聴したことが発覚すると、極刑に処されることもあるという。
「宗教色の強いコンテンツはもちろん、音楽や絵画を鑑賞しただけでも、投獄され、拷問を受け、最悪処刑されてしまう。ICCで正恩氏が『世界最悪のキリスト教徒迫害者』に選ばれたのは今年で連続3回目ですが、結局は金体制が代わらないかぎり、北朝鮮でのキリスト教徒迫害はなくならないでしょう」(同)
国連決議を無視したミサイル発射に、宗教弾圧による処刑。この国のやりたい放題を誰が止められるのだろうか。
(灯倫太郎)