新年度になって中央官庁ではこども家庭庁が4月3日にスタートした。だが岸田首相が「倍増」をブチ上げた子ども・子育て政策は、「異次元」から「次元の異なる」と言い方が変わったぐらいで、中身は依然よく分からないままだ。
東京都では今年1月に、小池百合子都知事が「月5000円」の子育て支援給付を「所得制限なし」で導入すると宣言。岸田首相への当てこすりなどとも言われたが、遅々として進まない国の子ども・子育て支援論議をよそに、地方では様々な政策が打ち出されていて、ともすれば地域間格差を産んでいる。
「例えば東京都品川区では、4月から区立の全学校の給食無償化、認可保育施設の第2子無償化、高校生まで医療費自己負担なしの『3つの無償化』を導入しています。一方、神奈川県横浜市では、8月から中学生以下の医療費がタダになりますが所得制限や一部負担があったりと、このように都市部だけでも支援内容はだいぶ異なります。また、東京23区の給食費の無償化では、品川区のほか足立区(中学のみ)や葛飾区、北区といった東京の北東部の複数の区と、世田谷区、港区、中央区といった高所得者が多く住む区にも今年度から導入されていて、都民にすればいろいろと思うところがありそうです」(全国紙記者)
何かと物入りな子育てでは、制度のちょっとした違いでも家計に与える影響は大きいはずだ。
「今春の3期目を終えるタイミングに引退する兵庫県明石市の名物市長・泉房穂さんは、周囲と揉めるなど何かと話題に事欠かない人ですが、なんと言っても18歳までの医療費、第2子以降の保育料、中学校の給食費、公共施設の遊び場、おむつ定期便(0歳児見守り訪問)の5つの無償化で、子ども・子育て支援を他に先んじて導入した首長として有名でした。他にも子育てに優しい自治体として有名な千葉県印西市や流山市は転入者が多く、出生数も増加しています」(同)
65歳以上人口がピークに達する2040年問題に向けて、衰退する地方はますます衰えるばかり。今後はどんな子ども・子育て政策を行うかが、持続可能な自治体運営の大きな鍵となりそうだ。
(猫間滋)