混合リレー対策?競泳日本チームの合宿所にある「トランプ」の秘密

 水泳・世界選手権で日本勢は金メダル2個を含む計6個のメダルを獲得した。来年の東京五輪に備え、収穫の多い大会となったようだが、まだ解消されていない課題もあった。

「瀬戸大也が200m、400m個人メドレーの両方で金メダル、200mバタフライで銀メダルを獲得。抜群の安定感を見せましたが、一方で女子のメダルは400m個人メドレーで銅を獲得した大橋悠依だけ。今後、女子選手にも勢いが出ればいいんですが」(体育協会詰め記者)

 絶対的エース・池江璃花子の不在を嘆いているのではない。女子選手に勢いがなければ、東京五輪から公式種目として実施される混合メドレーリレー(4人×100m)に勝てないからだ。

「背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、自由形の順にリレーするのですが、この新種目の面白いところは、男女の泳ぐ順番が各国の裁量に任されていることです」(同前)

 男女のタイム差が比較的小さいとされるバタフライと自由形の後半2種目に女子を起用するのが定石とされるが、アンカーに強い男子選手を置いて追い上げるチームもある。今回の世界水泳で日本チームは、女子背泳ぎの酒井夏海、男子平泳ぎ小関也朱篤、男子バタフライ水沼尚輝、女子自由形大本里佳のオーダーだったが、第4泳者の大本の飛び込むタイミングがわずかに早く失格になった。
 
 冷静さを欠いたのは「第3泳者(男子)が順位を上げたので、焦ってしまった」(大本)とのこと。大本がプールに飛び込んだとき、日本は7位から3位に順位に上げていた。メダルの重圧だろう。
 
「こうしたことも踏まえ、日本競泳陣は東京五輪まで長期、短期の合宿を連続させ、国際大会をこなしていきます。男女ともに結束力を高めるためです」(TV局スポーツ部員)

 チームワークの強化は、選手も不可欠と考えているそうだ。その影響だろう。選手の提案で、合宿所の食堂入り口にはトランプが置かれている。ゲームに興じるためではない。トランプを引き、スペード、ハート、クローバー、ダイヤに分かれる。そうすれば、特定の仲良しグループで固まることがなく、親睦が深まるからだ。

「合宿の連続ですから、その期間中に誕生日を迎える選手も少なくありません。そうすると、ケーキを出して、みんなでハッピーバースデーを合唱しています」(関係者)

 コーチ陣は選手が自主的に始めたこととし、それを黙認。ちょっと子どもじみた感もしないではないが、チームワーク強化のための小さな一歩を積み重ねているという。この団結力を五輪本番で生かしてほしいものだ。

(スポーツライター・飯山満)

スポーツ