起業家1000人を海外派遣「スタートアップ育成」が国内で伸び悩む根本理由とは

 1月8日、西村康稔経済産業大臣は米ラスベガスで開催されている技術見本市「CES」でスタートアップ(新興企業)のブースを視察。その後、今後5年間で日本の若手起業家1000人をフランスやイスラエルに派遣し、スタートアップ企業を育成する方針であることを記者団に明らかにした。

 岸田内閣は2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付け、昨年11月には若手起業家の育成5カ年計画を発表。27年度までに投資額を10兆円規模に引き上げるほか、スタートアップを10万社創出し、その中からユニコーン(企業価値10億ドル=約1320億円以上の未上場企業)を100社創出するなど力を入れているが、今回明かされた海外派遣もその一環と見られている。西村大臣は「それぞれの地域で起業家同士刺激し合い、日本のスタートアップも大きくなって帰ってきてほしい」と説明した。

 しかし、これには「海外ではなく、もっと日本で活躍できる場を作るべきだ」といった意見も少なくない。現在、日本にはユニコーン企業が22年10月時点でわずか12社しか存在しない。確かにそのような状況を考えれば、国内から活躍できるスタートアップ支援が必要とするのも当然のように思える。

「日本はスタートアップ企業が育ちにくいと言われていますが、投資額は1兆円を超えており今後さらに引き上げられる可能性があることから、支援が不十分というわけではありません。結局、日本国内で成功したとしてもその先に海外市場を視野に入れる企業が少ないということ。そうした意味でも、フランスやイスラエルでスタートアップを始めるというのは、非常に面白い試みだと思います」(フリージャーナリスト)

 海外で成長したスタートアップが成長して日本に戻ってくることを願うばかりだ。

(小林洋三)

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