ナニッ、健康保険証が2年後に廃止!? しかも、マイナンバーカードと一体化するなんて「聞いてないよ〜!」。置き去りにされたガラケー世代の悲痛な声が聞こえてくるようだ。事実上の〝国民総背番号制〟復活で通院できなくなったら、どうすればいいんだ!!
方針転換は総理だけの専売特許かと思いきや、河野太郎デジタル相(59)まで右へならえをしてしまった。10月13日に突如、「24年度秋に現在の保険証を廃止し、マイナンバーカードとの一体化」を宣言したのだ。
マイナカード取得は、政府が国民に申請していただきたいという「お願いベース」で義務ではなかった。ところが、紙の健康保険証を廃止し、「マイナ保険証」に切り替えるという方針は、国民皆保険制の日本では事実上の強制取得を突きつけられたも同然。しかも、政府が強硬策に出たのは自らの不手際が原因だというから聞いてあきれる。政治部デスクが説明する。
「当初、総務省のロードマップでは、来年3月末で国民全員にマイナカードの交付を完了させる予定でした。しかし、7月末での交付率は45.9%止まり。当然、昨年10月から始まったマイナ保険証への切り替えも停滞していました。8月にデジタル相に就いた河野氏は『保険証があるからマイナカードが普及しないんだ』と息巻き、前倒しで保険証廃止を決めたのです。その後、総務省は10月18日時点で取得率が50%を超えたことを発表したが、大手病院はともかく、町医者はマイナ保険証専用の読み取り機の設置もできていない。わずか2年で完全に切り替えるのは不可能に近いでしょうね」
これまで「メリットを感じない」ことを最大の理由に、国民から無用の長物扱いだったマイナカード。今後、マイナ保険証へ移行することで、高額療養費制度がスムーズに受けられ、お薬手帳も不要となる。また確定申告での医療費控除にも便利というが、メリットはそれだけ? 都内内科医がダメ押しする。
「ウチでは今年4月から読み取り機を導入したが、使用したのは1回だけ。実はマイナ保険証を使うと、従来の保険証より医療費が高くなる逆転現象があった。その批判を受けた政府は、10月からマイナ保険証で初診時の追加費を21円から6円に値下げ、従来の保険証で9円から12円と値上げと改定した。その差は6円。これをメリットと感じる人はいないでしょうね」
セコい恩恵の上に、高齢者の取得には高いハードルがある。ITジャーナリストの井上トシユキ氏がこう指摘する。
「マイナカード発行には少なくとも2つの暗証番号が必要になる。役所の係員は『お孫さんの誕生日で』などとアドバイスしているが、物忘れが激しい高齢者に冷たい仕組みなのです」
なんとかマイナカードを取得できても、マイナ保険証への切り替えは、さらに困難を極める。
「マイナポータルという専用ホームページに自分の暗証番号を入力した上、保険証番号など必要事項を打ち込めば簡単にできると政府は説明するが、スマホなどを駆使する人ならともかく、高齢者が行うには至難の業でしょう。このままいけば、切り替えできない『保険証難民』であふれかえり、病院窓口で10割負担の支払いを要求されかねない」(政治部デスク)
逆風を察知したのか、岸田文雄総理(65)は保険証廃止の撤回はしなかったが、「保険料を納めている人が保険診療を受けられる制度を用意する」と軌道修正。ついには「マイナ保険証に切り替える必要なんてどこにあるの?」の状態になった。
*週刊アサヒ芸能11月10日号掲載