日本時間の7日朝、日本人宇宙飛行士の若田光一さんが5回目の宇宙飛行で国際宇宙ステーションのドッキングに成功、およそ半年間の宇宙滞在を始めた。これから月や火星の探査を見据えた実験などを行う予定だ。
宇宙開発は1980年代と2000年代前半の2度の宇宙開発ベンチャーのブームを経て、現在は3次ブームを迎えている。2040年までに宇宙開発産業は150兆円の市場規模に成長すると言われ、AIやロボット産業同様、今後の成長分野としてあらゆる企業が参入を図っている。
「これまでは国内だったら鹿児島県の種子島、それ以外はロシアを中心に海外に人工衛星の打ち上げを頼るしかない状況だったところが、北海道では十勝の大樹町がロケットの打ち上げ拠点の『宇宙港』の整備を目指すなど、北海道は宇宙産業に積極的に乗り出しています。9月29日には帯広で宇宙ビジネスのカンファレンス『北海道宇宙サミット』が開催されました。大樹町が中心になって主催、北海道や総務省などの官庁などが後援したイベントでしたが、当然、北海道の地元企業や宇宙関連企業が協賛する中、最上位のダイヤモンドスポンサー2社は、東京海上日動と三井住友海上の損保2社だったのです」(経済ジャーナリスト)
宇宙開発に損保と聞けば、最初は奇異な感がするだろう。ところが実は、損保会社は宇宙開発ビジネスでは欠かせない存在なのだ。
そもそも損害保険の始まりは古代ギリシア時代に遡る。当時の海上輸送では、嵐や海賊に遭ったら仕方なく積み荷を海に捨てて難を苦れることがあった。すると航海そのものは大きな損失になるので、これを荷主と船主で分担した。リスクの分散だ。そして大航海時代になると、金融業者がリスクを肩代わりするようになった。現在につながる損保の誕生だ。
当時は海上交通が危険な冒険だったが、今の冒険は宇宙航海だ。冒険には様々なリスクが伴う。だから冒険にあたっては損保会社の存在が欠かせないわけだ。
では両社にはどんな「宇宙保険」があるかというと、
「東京海上日動は今年の4月に世界初の『月保険』を英国の宇宙保険企業と共同で開発しました。ローバー(探査機)での月面探査ミッションを保険対象にしたもので、探査に失敗した場合、それにかかった輸送費や開発した月面探査機の製造費を補償するという商品です。一方の三井住友海上は少し遅れて9月に『宇宙保険』を開発しました。こちらは月着陸船の打ち上げミッションが対象となり、ロケットの打ち上げ前から月面着陸するまでのリスクを幅広く補償するというもので、同社では特設サイトも設けています」(同)
宇宙保険が広がりつつある背景には、宇宙開発が政府主導から民間の企業開発に移ったこと。また、ロケットの小型化や打ち上げが低コストになったことで、ビジネスとして手をつけやすくなったことがあるという。
宇宙という地面のない空間でも、転ばぬ先に杖は必要ということらしい。
(猫間滋)