「つまみは何本指で回す?」で16年連続「イグ・ノーベル賞」で日本人が強いワケ

「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」でお馴染みのイグ・ノーベル賞の受賞者が、日本時間の9月16日に発表されたが、「工学賞」で千葉大学の研究グループが受賞した。

 研究内容は、「人間がつまみを回す際、最も効率的な指の使い方」を解明したというものだ。同賞は10の分野に贈られるが、例えば「経済学賞」は「なぜ成功するのは最も優れた人ではなく最もラッキーな人なのか」や、「文学賞」は「法律関係の文章が分かりにくくなる理由」などで、やはりいずれもユニークなものばかりだ。
 
 ところで日本人は本家のノーベル賞でも多数の受賞者を出しているが、イグ・ノーベル賞ともなるとさらに強い。今回の受賞で日本人は、16年連続で選出されている。イグ・ノーベル賞は1991年にアメリカの雑誌編集者らによって創設されたが、以来、28回も受賞している。その理由はどういったところにあるのだろうか。

「創設者の1人のマーク・エイブラハムズ氏が18年に来日して講演を行っています。そこで彼は、同じく受賞の多いイギリスと合わせて『日本とイギリスは奇人変人を誇る国だから』としていますが、同調圧力が強くて“出る杭は打たれる”国民性から考えると、彼の意見には同意しかねるという人も多いでしょう。ただ、やはり受賞の多いアメリカも含めて、3つの国は『笑い』には定評がある国なので、そのあたりが変わった研究に対する寛容さにつながっているのかもしれません」(科学ライター)

 そして忘れてはならないのは、研究を巡るお金の話だ。

「大学の研究資金には、国公大が安定的・持続的に研究活動をおこなうために交付される『運営費交付金』と、研究課題を募り、提案された中から実施すべき課題を採択して配分される『競争的資金』の2つがあります。産学共同の必要性が叫ばれ実用性が求められる昨今は、前者が減って後者が増える傾向にありますが、前者は浅く広く配られていることから、基礎研究が根強く行われているという状況があります。それが、一見すると役に立たなさそうな研究を可能にしているのかもしれません」(同)

 ただ教育界に「成果」を求める声は日に日に大きくなっている。今後、日本人がイグ・ノーベル賞を受賞できなくなったら、それは日本の研究環境が悪くなった証なのかもしれない。

(猫間滋)

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