「電力不足対策」は国民の良心頼み! エネルギー計画「無策」で日本は“再生不可能”に

 経済産業省が「電力需給ひっ迫注意報」を発令したのは6月27日から4日間。7月1日からは7年ぶりに全国に節電要請を行った(9月30日まで)。

 夏本番はこれからだというのに節電とはどういうことだと首を傾げた人も多いだろう。東電の株主でもある東京都の小池百合子知事も、「節電頼みは本来あるべき姿ではない。とても容認できない」とオカンムリだ。

 発展途上国ならいざ知らず、先進国であるはずの日本でなぜこんな事態が起こるのか?

「今回の電力不足の原因は大きく3つあります。1つ目は火力発電所が休廃止されていること、2つ目は世界的にLNGが不足していること、そして3つ目はこれが一番大きいのですが原発の再稼働が遅れていることです。福島第一原発の事故以降、日本の原子力発電所は安全基準の見直しが行われ、それをクリアすることが11年たってもできない。現在、全国に62基あるうち稼働しているのは4基しかなく、いずれも西日本で、東日本で動いている原発はありません。新規制基準が適切かどうかという議論もなくはないですが、そもそも安全性に不安があるようなものを作るなよという話で、実際、福島はあんなことになってしまった。近い将来、首都直下型や南海トラフなどの巨大地震が起きるのは確実と言われている中、電力が足りないからすぐに原発を再稼働しましょうと国民を納得させるのは難しいでしょう」(専門誌記者)

 原発の代わりになるのが火力発電所だが、脱炭素の動きもあって火力発電所は縮小の方向にある。NHKの調査によれば、この5年間で火力発電所の供給力は1600万キロワットほど減っているという。これは約540万世帯分の電力を賄える量。かといって、休止中の火力発電所を、どんどん再稼働させるわけにもいかない。
 
「先日の猛暑で姉崎火力発電所5号機を1日前倒しで再稼働させましたが、これも運転開始から45年がたっていていつトラブルを起こしてもおかしくありません。実際、ここにきて火力発電所のトラブルが相次いでいます」(同)

 原子力もダメ、火力もダメ、となれば期待されるのが太陽光や風力といった再生可能エネルギーだが、こちらは導入コストが高く発電効率も悪い、つまり儲からないために事業として手を出しづらく、なかなか普及が進まない。だが、必ずしもコストの問題だけではない、と先の記者は言う。
 
「太陽光や風力など再エネの発電コストは年々圧縮されており、逆に原発は新基準に則った安全対策や使用済み燃料棒の処理、将来の廃炉の費用がかさんでいる。それを換算すると、経産省によれば2030年には太陽光と原子力の発電コストは逆転すると試算しています。それより再エネが問題なのは、天候次第で発電量が安定しないということ。この弱点がある限り、現在の技術では電源構成の柱になりえないのです」

 政府は菅内閣時代に2030年の電源構成を火力41%、原子力20〜22%、再エネ36〜38%という高い目標を掲げているが、

「再エネの拡大どころか、前述したように原発の再稼働さえままならず、目標達成は極めて難しいと言わざるをえません。さらに今般のロシア情勢で、日本がサハリン2からの撤退を余儀なくされると、LNG輸入量の1割を失うことになり、火力まで足りなくなる恐れがあります。日本のエネルギー自給率は12%しかなく、これは主要45カ国中42番目の低さ。であれば、国が描く将来のエネルギー政策をもっと本気で考えなければならないはずですが、実態はご存じの通り、原発を将来どうするのかさえ曖昧なまま。結局、いずれ再エネに本格シフトしなければいけないのですから、であれば官民挙げて太陽光や風力や地熱発電の大規模開発をするとか、再エネの弱点を補うべく最大効率の蓄電池研究開発のために大胆に予算をつけるとか、スケジュールを切って行うべきです。『エネルギーミクス』といえば聞こえはいいが、火力も本気、原子力も本気、再エネも本気では、何も変わらないでしょう」(同)

 ちなみにエネルギー自給率約40%のドイツは、ロシアからのガスパイプラインがストップしていることもあり、2035年以降に国内の電力供給をほぼ100%再生可能エネルギーで賄う方針を固めている。

 日本が“再生不可能”になることだけは、避けてほしいものだが‥‥。

(加賀新一郎)

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