新型コロナ給付金として山口県阿武町から誤入金された4630万円を再三の返還要請に応じず、口座からの出金を繰り返すなどして電子計算機使用詐欺容疑で逮捕された田口翔容疑者(24)。振り込んだ自治体側が公表したことで大騒動になったが、表に出ないだけでこうした誤送金トラブルは少なくないとも言われている。
「もう10数年前の話ですが、当時勤めていた町工場で同じような事件がありました。会社側のミスで若手社員の口座に1ケタ多く給料が振り込まれたことがあったんです」
そう語るのは40代の男性会社員。しかも、その社員は給料日の直後に一方的に会社を辞めてしまう。ただし、サービス残業当たり前のブラック職場で突然辞める社員も多く、それ自体は珍しくなかったそうだ。
「入金ミスに会社が気づいたのは辞めたあと。本人とも連絡がつかず、実家に電話したようですが彼の両親は支払いを拒否。それでも社長は被害届を出しませんでした。小さな会社だったので取引先に知られて信用を失い、契約を切られることを恐れたのだと思います」
しかし、誤送金分のお金はしばらくして全額返還されたとか。聞けば、元社員は社長に土下座して詫びたのだという。
「大金に目がくらんでプチ豪遊してたようです。そいつもギャンブルに手を出したと聞きましたが、今回の事件と大きく違うのは負けずに儲けちゃったこと。それでなぜか冷静になり、罪の意識が芽生えたらしいです」
会社も事を荒立てる気はなく、事情を知るのも一部の社員のみだったので緘口令が敷かれ闇に葬られたとのこと。実際に誤送金トラブルを間近で見ていた立場として阿武町のケースはどう見えたのだろうか?
「この町も元勤務先も一番悪いのは持ち逃げしたヤツですが、誤送金した側も問題。責任の所在をはっきりさせるべきです。私が働いていた会社は事実をないことにしただけではなく、入金ミスを犯した経理担当者は社長の縁故採用だったので一切お咎めナシ。会社も相当ヤバいと思いましたし、見切りをつけて転職を決断するきっかけになりました」
阿武町には決済代行会社から3500万円余りが振り込まれるなど、被害額の9割を回収したというが、“送った相手が悪かった”で泣き寝入りするケースは民間では結構あるようだ。