かねてからプーチン大統領との交際が噂される、新体操の元女王アリーナ・カバエワさん(38)がウクライナ侵攻を受け、身の安全を確保するため4人の子どもと共にスイス国内で身を潜めているーー。米紙「ニューヨークポスト」が、そんな記事を掲載したのは今月3日のことだ。
記事によれば、カバエワさんには09年に誕生した男児と、15年に授かった双子の女児、そしてもう1人男の子がいて、子どもたちはすでにスイスのパスポートを所持、カバエワさん自身もスイス国籍を取得している可能性があるという。
「プーチン大統領は、1983年に元客室乗務員のリュドミラさんと結婚、長女マリアさんと次女カテリーナさんをもうけたあと13年に離婚していますが、その原因をとなったのが、プーチン氏の交際相手とされるカバエワさんの存在だったと言われています」(ロシア事情に詳しいジャーナリスト)
カバエワさんは00年シドニー五輪の個人総合で銅、04年アテネ五輪で金メダルを獲得。世界選手権での9つの金メダルを含めると、手にしたメダルは21個という、ロシア史上最高の新体操選手。引退後はロシア連邦下院選で統一ロシアより出馬し、議員の職に就いた。
「地元タブロイド紙『モスコフスキー・コレスポンデント』が、ふたりの不貞関係を報じたのは2008年のことですが、クレムリン(ロシア大統領府)はこれを否認。ところが、その後、このニュースを報道したタブロイド紙は突然”資金難”を原因に廃刊となってしまった。当時は、政府による圧力があったのではと噂されました。カバエワさんは2014年まで6年あまり下院議員を務めますが、その後ロシアの最大メディア『ナショナルメディアグループ』の会長に任命されました。いくら国民的アスリートとはいえ、この出世ぶりは異例中の異例。プーチン氏の後ろ盾があったことは”公然の秘密”として語られています」(同)
ただ、メディアグループ会長という立場にありながら、ここ数年、カバエワさんは公の場にほとんど姿を現さず、その動向は謎とされていた。ところが、そんな”元女王”が突然、メディアで口を開いたのが、北京パラリンピックからロシア選手が除外された時だった。
3月3日、国際パラリンピック委員会が、ウクライナへ侵攻したロシアと友好国ベラルーシの選手団を、北京大会から除外すると発表。これを受け、彼女はタス通信を通じ「スポーツの歴史の中で、これほど恥ずかしい1ページは存在しなかった。多くの国際スポーツ団体のリーダーは、様々な口実をつけてスポーツ倫理にふさわしくない行動をしてきました。今では、すべてが明らかになった」と、強い口調で非難したのだ。
「かねてからスポーツ大国として知られてきたロシアですが、ウクライナ侵攻をめぐり、今後しばらくの間、国際大会から排除されることは間違いない。そうなれば活躍の場を求め、ロシアを捨てて他国への移籍を画策する選手も相当数出てくることでしょう。そんな状態が10年、20年と続けば、ロシアがこれまで築き上げてきたスポーツ大国の歴史は完全に崩壊してしまいます。戦争という暴挙に出たプーチンも、さすがにそれだけは避けたい。そこでカバエワさんをあえて代弁者に立て北京大会に抗議させることで、ロシア選手に対しても『お前ら、ロシアを捨てたらタダでは済まされないぞ!』というメッセージを送っているという見方もできます。だとすると言い方は悪いですが、交際女性を使って国内のアスリートに脅しをかけていることになるわけですからね。カバエワさんのコメントを聞いたアスリートたちも、やりきれない気持ちなのではないでしょうか」(同)
それが事実だとしたら公私混同も甚だしいが、それも独裁者のやり方なのだろうか。いずれにせよ、今後も“非公認のファーストレディー”の動向が気になるところだ。
(灯倫太郎)