戸塚宏ヨットスクール校長が「体罰」の今を激白!/あの「ニュースの主役」を大追跡【4】

 訓練生の死亡を機に、スパルタ教育の是非を巡って、一大論争を巻き起こすことになった「戸塚ヨットスクール事件」。あれから約40年が経過しようとしている。当時、非難と称賛の両方を一身に浴びた校長、戸塚宏氏も81歳。だが、鋭い弁舌も独自の教育論も錆びついてはいなかった。

「以前、我々が行っていた指導は結果を残してきた。それは、ある程度まで大きくなった子供であっても、きちんと導いてあげることで更生するという期待のもとにやっておったんだけど、今はそれではダメなんですわ。まさか幼児期の問題だとは思ってなかった。その結論に至ったのは10年ぐらい前のことだね」

 先に記した訓練生死亡で傷害致死罪や監禁致死罪に問われた戸塚氏は、19年にわたって法廷闘争を続けた。しかし、最高裁が下した結論は、戸塚氏に対する懲役6年の刑だった。06年の出所後、ヨットスクールを再開。その指導方針は前述のように変化している。

「情緒障害を抱えた、いわゆる問題児は幼い頃に作っておかなければならない能力や、基本的な人間性ができていない。精神もハードとソフトに分けんといけんのですよ。学校で教えている勉強はソフトであって、幼児期に形成されるのがハード。そのハードができる時期に進歩させてあげなくてはいけない。そして、その進歩のためには絶対に『不快感』が必要。なのに、左派リベラルの馬鹿どもときたら、『不快感』を与えてはいかん、『不快感』は悪だと‥‥。違う、『不快感』は善なんですよ! そのリベラルどもが勝手な教育論を持ち出して、現在の子供は甘やかさなければならんというのが結論になってしまった。(必要な時期に)しごいてやることもできない。これでは、問題児はもう一生ダメだね」

 コロナ禍もあり、戸塚ヨットスクールは休校中だというが、公式サイトによれば、新規入校生の募集は停止している。それも、ここまで戸塚氏が述べてきたように、ハードが完成していない幼児期教育にウエイトを置いているため。今は「戸塚ジュニアヨットスクール」として運営されている。

「体罰は必要」と結果に基づく確固たる信念を貫く戸塚氏は、あの日のままだった。もちろん、当時も戸塚氏に批判的な声が多数を占める中、逆にスパルタ教育の意義を支持した人々もいた。その代表格が先頃、89歳で亡くなった石原慎太郎氏だろう。石原氏は「戸塚ヨットスクールを支援する会」の会長を務めていた。

「慎太郎や立川談志、一見すると体制側にいるが、反体制という人たちだった。彼らに共通しているのは、リベラルは胡散臭いと感じていること。だから、ウチに寄ってくる。慎太郎なんかはヨットに乗ってる現場の人間だったから、(結果が出ない)哲学に騙されないんですわ」

 穏やかな口調は長くは続かなかった。事件前、戸塚氏は非行少年を更生させるカリスマ教育者としてマスコミで紹介されていた。それが手のひらを返したように批判の急先鋒に‥‥。その舌鋒はマスコミに向けられる。

「教育というのは知行合一でなければならない。つまり、知識と行為は一体ということ。それをできもしないマスコミの馬鹿どもが教育に口を出した。体罰はけしからんとね。それが現状を生み出している。自分たちが素人だという自覚が全くなくて、ただただ『自分たちは偉い。だから偉くない市民を指導してやる』と。こういう(マスコミの)思い上がりが日本の教育を悪くしていった。それで被害を受けたのは誰ですか。子供たちなんですよ。かわいそうだとは思わないのか。おい、マスコミは反省しろ!」

*「週刊アサヒ芸能」2月17日号より

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