「米国の団結」を訴え、バイデン大統領が誕生して1年。だが、昨夏のアフガニスタンからの米軍撤収を機に支持率が急落。民主党内からも「2024年の大統領選はバイデンでは闘えない」との声が出るほど、危機的な状況が続いている。
そんな窮地に乗じ、怪気炎をあげているのがトランプ前大統領だ。
「トランプ氏は現在、一族が経営する企業スキャンダルの渦中にあり、昨年1月の連邦議会議事堂襲撃事件でも身辺調査が進んでいる身。ですが、共和党支持層には圧倒的人気を誇るため、今年11月の中間選挙でもトランプ人気にあやかろうとする候補が後を絶ちません。トランプ氏は15日にアリゾナ州で大規模な集会を開き、バイデン政権を指して『この国を破壊しようとしている。今が米国にとって最も危険なときだ』と主張。自身の出馬については明言しなかったものの、『われわれは(次期大統領選が行われる)2024年にホワイトハウスを取り戻す』と、政権奪還をぶち上げました」(政治ジャーナリスト)
そんな折も折、イランの最高指導者ハメネイ師の事務所ホームページに、トランプ前米大統領の暗殺を描いたようなアニメ動画が公開され、波紋を呼んでいる。
動画が公開されたのは、アリゾナで行われた集会の3日前にあたる12日のこと。内容は、トランプ氏とみられる人物がポンペオ前国務長官らしき側近らと一緒にゴルフをしている実写の映像が流れ、それをあたかも撮影しているかのようにカメラを備えたラジコンカーを遠隔操縦する軍服を着た人物が登場。するとトランプ氏の同伴競技者のスマホに《ソレイマニ殺人者とその命令を下した者は報いを受けよ》とメールが送られ、彼らの頭上にドローンの影が忍び寄り、トランプ氏に照準が合ったところで映像は暗転、《復讐遂行》の文字が現れる、というものだ。
「ソレイマニ氏とは、一昨年1月3日、アメリカ軍により暗殺されたイラン革命防衛隊の精鋭・コッズ部隊の司令官です。同氏は、イラクの首都バグダッドで車に乗って移動中、米軍のドローン(無人機)攻撃を受け死亡しました。トランプ氏はソレイマニ司令官をかねてから『世界最悪のテロリスト』と呼び、敵視していました」(同)
事件の5日後、イランは報復として米軍が駐留するイラクの基地を10発超の弾道ミサイルで攻撃、一時はあわや戦争の事態にまで緊迫していた。
「今月3日に行われたソレイマニ氏の追悼行事でイランのライシ大統領は、『当時の米大統領は裁判にかけられ(イスラムの)懲罰法によって裁かれ、神の裁きを受けなければならない』と述べ、『暗殺罪で公平な裁判にかけなければ、イスラムは報復するだろう』と表明しています。つまり、今回のアニメ動画は、その予告という意味かもしれません」(同)
殺害予告アニメの波紋は広がり続けている。
(灯倫太郎)