税金のように徴収される「受信料問題」英BBCは2年間凍結、NHKは?

 1963年に世界で最初にテレビ放送を開始した英国放送協会(BBC)の歴史はテレビの歴史でもある。そのBBCで、近いうちに受信料が廃止されるかもしれない。

「1月17日、イギリスのデジタル・メディア・文化・スポーツ相のナディーン・ドリス氏が下院で、BBCの年間受信料約2万4900円を2年間凍結する方針であることを報告したのです。ドリス氏はその直前にもツイッターで『英国の立派なコンテンツを支援して販売できる新しい資金調達案を考える時だ』とし、『高齢者が受信料を払えず懲役刑の脅しを受けることも終わり』と、本格的な廃止論議に着手するかのような発言を行っていました。イギリスでは、現在のジョンソン政権が発足した19年の総選挙で受信料を課金制(スクランブル放送化)にする見直し案を検討することを公約の1つに掲げていました」(経済ジャーナリスト)

 イギリスの公共放送局であるBBCの受信料が問題視される事情は日本と同じだ。若者の間ではテレビ離れが進行する一方、まるで税金のように受信料が徴収される。特にイギリスでは不払いは刑事罰の対象になるので、とうとう本格的に見直しが必要との機運が高まってきたということだ。

 では日本の場合はどうか。19年度にはNHKの受信料収入が10年度に比べて1割増の約7100億円になり、一方、国内の放送費が3割増えたあたりから「NHKの肥大化」を指摘する声が大きくなっていた。だからBBCの議論がNHKにも波及すると言われてきたが、当面はそこまで議論は進んでいない。

 そうした状況の中、12日にNHKは22年度の予算案を金子恭之総務大臣に提出した。それによると、事業収入は前年度より10億円少ない6890億円で、事業支出も前年度より240億円少ない同額と、収支均衡の予算案となっている。肥大化批判をかわす意図もあるのだろう、受信料の値下げや契約世帯数の減少に見合ったスリム化が図られている。その中でも注目すべきは、受信料徴収の外部委託の見直しだろう。

「NHKではいわゆる集金人による悪名高い『巡回訪問営業』から『訪問によらない営業』にシフトさせるとして、外部委託していた集金業務の担当分を21年度の1439万世帯から22年度は313万世帯まで減らすとしています。さらにこれら業者に対してNHKは、契約が切れた段階で打ち切りと伝えているとのことで、朝日新聞の報道によれば23年秋で全廃するとのことです」(同)

 こうした営業経費を21年度はトータルで約700億円もかけていたところを、22年度は約70億円圧縮するというのだから大きな前進だろう。ただ、会社の売り上げのほとんどをNHKの集金代行業務で稼いでいた上場企業もあるほどなので、そういった企業は一挙に窮地に陥ることになる。

(猫間滋)

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