最悪19万9000人が死亡し、経済被害は31兆円以上に上る—。
内閣府の中央防災会議が、北海道から東北地方太平洋沖にある「日本海溝」と「千島海溝」沿いでマグニチュード(M)9級の巨大地震が起きた場合の、起こりうる被害としてこんなショッキングな“被害想定”を公表したのは、昨年12月21日のこと。
「南海トラフ巨大地震の最大死者は32万3000人。さらに、首都直下地震は同2万3000人と想定されており、これで、3つの巨大地震の被害想定が完了したわけですが、最悪のケースとしてあげられたのが『冬の深夜』に大地震が発生した場合。冬は積雪によって避難できなかったり、外に避難しても低体温症など死亡リスクが高まります。過去の例を見ても、古くは1611年12月に起こった慶長三陸沖地震(M8.1)や、1703年12月31日の元禄地震(M7.9以上)、近年では、三陸はるか沖地震(1994年12月28日発生・M7.6)、翌95年1月17日に起こった阪神淡路大震災など、冬に大地震が起こる事例は少なくないのです」(防災問題に詳しいジャーナリスト)
列島は12月に入り、地震が頻発した。2日の茨城県南部(最大震度4、M5.0)を皮切りに、3日には山梨県東部・富士五湖で同5弱(M4.8)を記録。さらには、和歌山県紀伊水道で同5弱(M5.4)の地震が起こり、4日午後からはトカラ列島近海で群発地震が発生。内閣府が「被害想定」を発表した21日にも、北海道の日高地方中部と国後島付近で、それぞれ震度3の地震が発生し、国民を不安に陥れた。
実際、SNS上には《いよいよ、大地震が来る日も近いのか!》《事前に被害を想定しておくことは大切だが、なぜ、いま発表なのかが気になる?》《低体温症のリスクは、冬の日本列島なら、どこでも当てはまるはず!恐ろしい》といったコメントが相次いだ。
「巨大地震というのは、ある日突然起こるのではなく、発生する前にはM4〜6クラスの前震が発生します。そう考えると、各地で起きている地震が、プレート間の境界で起きる巨大地震の前兆である可能性は否定できない。日本の国土面積は世界のわずか0.25%に過ぎませんが、世界で発生するM6以上の大地震の約2割が集中する地震大国。つまり、日本の中で地震はいつ、どこで起きるかわからないものの、必ず起きることは覚悟しなければならない。そのためにも平時の備えが必要なのです」(前出・ジャーナリスト)
特に冬場での被害を想定した場合、避難所では、防寒具の備蓄が不十分なケースも珍しくないため、必ず事前に防寒インナーを用意し、雨や雪で濡れないようにビニール袋などで密閉、防災バッグなどに詰めておくことが必要。さらに、避難所では床からの冷えをブロックする対策として、銀マットとエアマットを用意しておくとベターだという。
いつ襲ってくるかわからない大地震だからこそ、備えあれば憂いなし。自分の身は自分で守るしかないことを胆に銘じるべきだろう。
(灯倫太郎)