フェイスブックが社名を変えるかもしれない、とのニュースが報じられている。新たに「メタバース」という社名になるのではないかと言うのだ。
「アメリカのテクノロジー関連ニュースサイトの『ザ・バージ』が、フェイスブックは社名変更を計画していると現地時間の19日に報じたのです。また同社は28日にイベントを予定していて、その場でCEOのザッカーバーグが明言するのではとも伝えています」(経済ジャーナリスト)
フェイスブックでは「噂や憶測にはコメントしない」としているので真偽は不明だが、タイミング的にはかなり信ぴょう性のあるニュースだ。
理由の1つは、同社の元プロダクトマネージャーだった人物が10月5日にアメリカ議会で、「フェイスブックがいかに子供を含む利用者がフェイスブック中毒に陥るように仕向けてきた」との証言をし、内部文書をマスコミに提供したことで、同社に対する疑惑が深まっているからだ。単純な話ではあるが、社名を変更することでイメージの刷新が図れる。だが、それよりもっともらしい理由として、フェイスブックがここ最近、いかにメタバースに注力しているかが新社名から伺えるからだ。
そもそも「メタバース」とは何かというと、もともとはアメリカのSF作家のニール・スティーヴンスンが1992年の作品『スノウ・クラッシュ』の中で、ネット上の仮想空間として描いたものだ。現在形の言い方をすれば、人間がポケモンGOでおなじみとなった拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を利用してつながる仮想空間。その3次元の仮想空間の中で人間はアバターとして登場し、その世界の中を行き来したり他の利用者とアバターを通じてコミュニケーションを取ったり、さらには仮想通貨を通じてビジネスなどを行うというもの。
目の前の現実とは異なった仮想現実空間が出来上がるという画期的な発想のため、幾多の企業によってビジネス利用が図られた。日本でもNTTデータやトヨタ、ドワンゴなどがこれを手掛けたことがある。それを今度はフェイスブックが現在のSNSに変わる社運をかけたプロジェクトとして手掛けようとしているというのだ。
「フェイスブックでは既に7月に専門部署を立ち上げ、その際にザッカーバーグは『将来は当社をSNS企業としてだけでなく、メタバース企業として見てもらえるようにする』とまで語っています。だからこそ社名変更報道が飛び出たわけですが、さらにこれを裏付けるものとして、10月18日には欧州で今後の5年間でメタバースの確立に必要な技術者を1万人採用する計画があるとも伝わりました。そしてそのための投資として、9月には約57億円と投じるとし、さらに10月にはクリエイター支援のために11億円超の基金を設立するともしています」(前出・ジャーナリスト)
ところでなぜ欧州で技術者を雇用するのかだが、やはり1つにはアメリカで持ち上がった同社への疑惑から、「今度は仮想空間中毒に陥れるつもりか」といった反発が強まるのを避けたいという意図があるのかもしれない。だがその欧州でも、10月21日にはイギリスで日本の公正取引委員会に当たる競争・市場庁が、動画検索共有サイト運営会社の買収調査に関する協力を怠ったとして、フェイスブックに約80億円の罰金を科したと公表されたばかり。
どうも出る杭というのは打たれる運命にあるようで。
(猫間滋)