シネコンが軒並み値上げでも興行収入は今後も健闘し続ける根拠

 東宝系映画館のTOHOシネマズと松竹系の松竹マルチプレックスシアターズ、東映系のティ・ジョイのシネコン大手が、6月1日から一部で入場料を値上げする。TOHOシネマズでは全国66施設で一般入場料が1800円から1900円となり、シニアやレディースデイなどの割引料金も100円引き上げ。3社とも、その理由を人件費や設備投資の負担増を挙げている。

「東急レクリエーションでも、全国に劇場を持つ『109シネマズ』の一般の鑑賞料金を1800円から1900円への値上げを発表しています。NetflixやHulu、Amazonプライム・ビデオなど、オンラインでのDVDレンタルや映像ストリーミングサービスが普及する中、今回の値上げにともない困惑する声も上がっています」(エンタメ雑誌記者)

 しかしである。《1900円も払ってわざわざ映画館まで行く人はいない》との見立てと実情は、いささか異なるようだ。

「2016年から映画館における年間興行収入は3年連続で2200億円を超えており、2000年代に入ってからの興収トップ3を独占しているのです。また、映画館のスクリーン数も、1993年に1734スクリーンまで減少しましたが、18年には3561スクリーンと2倍以上に増えています」(映画評論家)

 なぜ、ネット配信の時代に、映画館では興収もスクリーン数も増えているのか。

「昨今は作品数自体が激増しているため1本あたりの平均入場者数は減少していますが、ここへ来て16年の『君の名は。』『シン・ゴジラ』、17年の『美女と野獣』『名探偵コナン』、18年『ボヘミアン・ラプソディ』『劇場版コード・ブルー』など爆発的なヒット作に恵まれている。また、昨今はシネコンが増えたことにより利用年齢層が拡大し、一方でスマホなどの画面で映画を観ている若者たちの間で《話題作くらいは大きなスクリーンで観たい》との声も増えている。これらを確実に掴み続けるには、値上げの理由となっている設備投資増による付加価値の充実は必須というわけです」(同)

 値上げによって、ますます足を運びたくなる映画館への成長を期待したいところだ。

(小林洋三)

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